戀はいいものなんでしょうね。戀。英語なら、LOVE でしょうか。
そういえば、『ラヴ・イズ・ア・メニイ・スプレンダード・シング』という歌もありましたし。
「逢ひに來ひ」なんていうくらいですから、愛も戀も特別なんでしょう。
「それは恋の心のはじまりでも、あった。私の、父への「幼い恋」はこの木の下に、芽生えた。」
森 茉莉は、『私の恋人森 鷗外』という随筆の中で、そのように書いたいます。いや、連綿と書き綴っています。
1922年、森 茉莉は仏蘭西へ。仏文学者の、山田珠樹と結婚したために。1922年は、大正十一年。
大正十一年、鷗外は茉莉を見送るために、停車場に。その時の鷗外は茉莉との別れに苦悶したという。また、茉莉には「ある予感」が。茉莉が倫敦に着いた時、一通の電報が。「チチ、キトク」。実は「キトク」とは茉莉を哀しませないための方便だったのですが。
戀と言って良いのか、愛と言って良いのか。ドン・ファン・テノオリオ。ご存じスペインの遊蕩児。一説に、2,954人の女を愛したとか。もっともドン・ファン・テノオリオは伝説のお方ですから、これを聞いたムキになる必要はございません。
ドン・ファン・テノオリオが出てくるミステリに、『ドン・ファンの死』があります。エラリイ・クイーンが、1965年に発表した短篇。
「彼の精力のたくましさに憤りを発したフランシスコ派の修道士たちの手によって…………………。」
『ドン・ファンの死』では、架空の町、「ライツヴィル」で、ドン・ファン劇を上演することになって。そのための中世の衣裳として。
「衣裳も昔の通りダブレットとホーズからコッドピースまですっかりそろってるんです。」
「コッドピース」c od ep ic e は、昔むかしの「股袋」のこと。コッドピースは英語、フランス語では、「ブラゲット」 br ag u ett e と呼ばれた装飾品。
コッドピースとは……………………。まあ、私が下手な説明をするより、「西洋服装史」を開いたほうが早いでしょうね。
戀にもコッドピースにも、はるか縁遠い私ではありますが、「西洋服装史」には多少の興味がありますので。