プリンとブルー

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プリンは、美味しいものですね。第一、口の中での感触が一種独特であります。
「プリン」もあれば、「プディング」もありまして。プリンは主に、菓子。プディングなら料理という印象があります。プリンの人気に較べて、プディングはそれほど一般的ではありません。なぜなのか。
あるいは、茶碗蒸しに遠因があるのではないか。茶碗蒸しとプディングは、それほど遠くはありません。今の日本み茶碗蒸しが健在である以上、プディングの普及は少し難しいのではないでしょうか。
でも、プディング大好きというお方もいないわけではありません。

「殊に、僕はプッディング ( とりわけ、ブレッドプッディング ) が好きなので、ここの、デイプロマートを愛しています。」

古川ロッパ著『ロッパ食談』に、そのように出ています。『ロッパ食談』は、1955年の刊。
これはその時代に、銀座にあった、ドイツ料理店「ケテル」についての話なのですが。
この『ロッパ食談』について、谷崎潤一郎が、一筆書いています。
『「緑波食談」に寄す』と、題して。

「緑波君は晩餐にうまいものを腹一杯食べたあとで、直ぐ明日の朝飯のお數は何にしようかと考へるさうである。

そんなふうに書いたいます。
これは古川ロッパが、同じく食通として、谷崎潤一郎を訪ね、特にお願いをした結果であるらしい。その時、谷崎潤一郎は、古川ロッパに書を与えた。そこには。

食前方丈

の文字があったという。これは「孟氏」の言葉。たくさんのご馳走を前に、よだれを流している様子なんだとか。
えーと。プディングの話でしたよね。プディングが出てくる小説に、『誇りと復讐』があります。2009年に、ジェフリー・アーチャーが発表した物語。

「ホットプレートではポリッジ、エッグ、ベーコン、ブラック・プディング、それにキッパーまで注文できた。」

これはあるホテルでの朝食場面。また、『誇りと復讐』には、こんな描写も出てきます。

「ネイヴィ・ブルーのテイラード・スーツに、その朝包装紙から出したように見えるクリーム色のシャツを着ていた。」

ここでは「ネイヴィ・ブルー」と訳されています。
n a vy b l u e には、どんな日本語表記がふさわしいのでしょうか。「ネイヴィー・ブルー」なのか、「ネイヴィ・ブルー」なのか。さあ。
ただし本来の「ネイヴィー・ブルー」は、英國海軍の制服の色。ほとんど黒に近い紺のこと。
空の色よりむしろブラック・プディングの色に近いのかも知れませんが。

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