ロシアは、大国ですよね。
英語では、Russia と書いて「ラッシア」と訓むんだそうですが。
とにかく広い国ですから、何から何まである国です。
もちろん、ワインも。ロシアのコーカサス地方は、ワインの産地。
昔のことを申しますと、グルジアでも。グルジアは帝政ロシアの時代にはロシア領土だったのですから。
グルジアのワインの歴史は、一万年前に遡るんだとか。
ロシアでワインが造られる。ということは葡萄の木があるわけで。
ロシア料理によく葡萄の葉が用いられるのも、そのためなのでしょう。
たとえば、「ドルマ」。ドルマはマトンを葡萄の葉で包んだロシア料理のこと。
私たちがふつうに食べているロールキャベツの源は、このドルマではないかと、考えられています。
ロシア料理のひとつに、「ヒンカリ」が。ヒンカリは、ロシア風水餃子のこと。中身は主に豚肉。
ヒンカリはもともとグルジア料理だったという。
「パンでもいろいろな形をしたパンが幾種類も出てくるので、妙子は前菜を食べただけで好い加減にお腹が一杯になったが、」
谷崎潤一郎の長篇『細雪』に、そのような一節が出てきます。
これはロシア人のキリレンコ家での食事に招かれて。
1940年代のロシア人が健啖家だったのは、間違いないでしょう。
ロシアの歴史は、ちょっと日本と似ているところがあります。
日本に江戸時代があったように、ロシアには帝政時代があった点に於いて。
帝政ロシアを築いたのは、ピヨトール大帝。1721年のことですね。
そして1917年に、ニコライ二世が退位するまでの、ざっと二百年続いたわけです。
その帝政ロシアが参考にしたのが、昔のフランス。
帝政ロシアの上流階級では、ごくふつうにフランス語が飛び交って、シャンパンが滝のように流れたという。
当時、ヨオロッパでの最大のシャンパン市場は、ロシアだったのですね。
帝政ロシアの話が出てくる小説に、『失われた時を求めて』があります。もちろん、フランスの作家、マルセル・プルーストの代表作。
「私がつねづね考えていたのは、この王太子にニコライ皇帝が並々ならぬ感情をいだいていたこと。」
ここでの「王太子」は、当時ギリシアのコンスタンティノス皇子のこと。
また、『失われた時を求めて』には、こんな描写も出てきます。
「わたしは鼻メガネをかけただけでじきにワシの翼の片方だってわかりましたけど。」
ここでの「鼻メガネ」は、原文では、「ロニヨン」lorgnons になっています。
フランス語では鼻メガネを、「ロニヨン」と呼ぶことが多いようですね。
日本にもロニヨンの愛用者はいます。吉田 茂だとか、佐藤春夫だとか。
どなたか1910年代のロニヨンを作って頂けませんでしょうか。