コロンと好感

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コロンは、オオデコロンのことですよね。
オオデコロンは、ほんとうは、オオ・ド・コロオニュ e a u d e Co l ogn e で、フランス語からはじまっています。
もちろん、「ケルンの水」の意味なのです。ケルンの水が、「オオ・ド・コロオニュ」で、これがオオデコロンとなって、さらに省略されて、コロンなのでしょう。
現在のコロンがドイツのケルンにはじまっているのは、ほとんど常識になっています。十八世紀はじめのことです。しかし、この「ケルンの水」が広くフランスに伝えられたのは、ナポレオンと関係があります。
ナポレオン軍がドイツに攻め入って、凱旋帰国。その時の兵士の土産に「ケルンの水」があったのです。
ただし、十八世紀末の「ケルンの水」は、今とは少し違っていました。主に、「消毒水」だったのです。ケルンの水で手足を洗い、うがいをし、フケ取り用ともなったのであります。
ケルンの水の正体は90数パーセント、アルコールで。残り数パーセントが香料だったから。それに十八世紀のフランスは、必ずしも清潔そのものでもなかったから。それに、疫病の流行りもあったから。
その「ケルンの水」が、歴史とともに大きく変化して、今日のコロンとなったわけですね。
コロンが出てくるミステリに、『最後に笑った男』があります。1980年に、イギリスの作家、ブライアン・フリーマントルが発表した物語。

「ダイヤの指輪を三個はめ、コロンの香りを部屋中にふりまき……………………。」

これは、レヴィッキーという男の様子。たしかに、ダイヤの指環を三つも嵌めるようなら、部屋中にコロンの匂いをふりまくこともあるかも知れませんね。
『最後に笑った男』には、こんな描写も出てきます。

「このペトロフという男に好感を抱かずにいるのはむずかしい。生地も仕立ても高級そうなスーツに身を固めた姿は、永年の議員生活で政治家としての貫禄を身につけたアメリカの上院議員を思わせる。」

これは、アメリカのジェイムズ・ピーターソンから眺めての、ロシアの、ディミトリ・ペトロフの着こなし。
ピーターソンはCIAの長官。ペトロフは、KGBの議長という設定。
「好感」。服も、着こなしも、その最終目的は、「好感」にあるのではないでしょうか。
奇抜な服、有名品、高価な服。それらはほんとうに「好感」を生むのか。
「極上のワインは、水に近くなる」との説があります。まったく同じように。
「極上の服は、透明に近くなる」。そうなのかも知れませんね。

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