シュタインは、姓名ですよね。ことにドイツには多い姓ではないでしょうか。
昔むかし、シュタインという、それはそれはお美しいお方がいらしたんだそうです。当時のヴァイマル公国に。
シャルロッテ・フォン・シュタイン。本名はあまりに長いので、シャルロッテ・フォン・シュタインと略させて頂きます。
シャルロッテ・フォン・シュタインは、1742年12月25日に生まれています。「フォン」の名前からも窺えるように、上流階級に生まれています。長じては、宮廷の女官となって。1764年にはやはり貴族の、ゴットロープ・フォン・シュタインと結婚。
シャルロッテ・フォン・シュタインはたしかにお美しいお方だったのですが。かてて加えて、才女でもありました。ご自分でも小説や戯曲を発表しています。
1775年。ヴァイマルに、ゲエテが。これはヴァイマル公国からとくに招かれてのこと。ゲエテは二十六歳でありましたが、事実上の総理として、ヴァイマル公国の政治を司っています。
1775年には、シャルロッテ・フォン・シュタインは、三十三歳。ゲエテよりも七歳上の、七人の子のある既婚女性でありました。が、シュタインとゲエテの間に、戀が芽生えたんだそうです。
ゲエテはヴァイマルに十年以上住んでいます。この間に、多くの戀の詩も。おそらく、シュタインあってのことでしょう。
そのゲエテと文通していたのが、カーライル。カーライルとゲエテとの書簡の遣り取り。意外にも思えるのですが、ほんとうの話。
カーライルは、スコットランドが生んだ偉人、トオマス・カーライルであります。
「この詩を私は、あの典雅な贈物をいただいてからすぐ、フレイザー氏を通じてロンドンのお仲間へ届けてもらいました。」
1831年8月19日。ヴァイマルのゲエテは、カーライルに宛てて、そのような内容の手紙を書いています。
8月28日は、ゲエテの誕生日。この日、カーライルは特製のシールをゲエテに贈った。その礼状なのです。
シールは、印形。署名にも使える装飾品。ふだんは懐中時計の鎖に吊しておいたものですが。
印形、シールがもう一度、復活しないものでしょうか。