ホームズとホンブルグ

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ホームズは、いうまでもなく、シャーロック・ホームズですよね。
今なお、ホームズは実在の人物であるかのように愛されています。もちろん、コナン・ドイルの、生み出した名探偵の名前なんですが。
シャーロック・ホームズが例によって例のごとく活躍する物語に、『黒ピーター』があります。原題もまた、『ブラック・ピーター』。1904年『ザ・ストランド・マガジン』3月号に発表された短篇。この中に。

「一八八三年にはスコットランドの海港ダンディーのシー・ユニコーン号という海豹蒸気船の船長をしていました。」

これは、ピーター・ケアリー船長についての説明として。
でも、どうしてここに船の話が出てくるのか。
コナン・ドイルには、勝手知ったる世界だったので。
1880年。コナン・ドイルは約七ヵ月、捕鯨船の船医として、乗り組んだことがあったから。当時の捕鯨船の様子については、お得意だったに違いありません。
コナン・ドイルはエディンバラ大学の医学部を出ていますから、医者になろうとしたのも、当時だったでしょう。
でも、個人病院が暇だったので、ミステリを書きはじめたのは、有名な話ですよね。
シャーロック・ホームズは天才型の探偵。これに対して凡人型の探偵が、フレンチ警部。
同じく英國の作家、フリーマン・ウイルズ・クロフツが生みの親の地道な探偵。
クロフツのミステリにはもうひとつの特徴があって、倒敍型であること。まず事件が起きて、すでに犯人は読者には分かっている形式。
クロフツが1950年頃に書いて物語に、『小包』があります。この中に。

「彼はいつもきまって、ツイードの服を着て、ホンブルグ帽をかぶっていた。」

これは「ハスラー」という人物について。ハスラーは変装するために、ホンブルグを脱いで、山高帽、つまりボウラーに変える。
一見、なんでもない描写ですが。少し大げさに申しますと、身分を変えることでもあるのです。
ホンブルグは貴族的。ボウラーは一般市民的なので。

「ホンブルグ・ハットは、英國皇太子が愛用なさった帽子である。」

1894年『カントリー・ジェントルマンズ・カタログ』には、そのように出ています。

「ダークな服に、ホンブルグ・ハットをかぶった、完璧なる紳士。」

1901年『スケッチ』9月4日号にも、そのように出ています。
ホンブルグとボウラーは似ていなくもないのですが。「身分」からいたしますと、ずっと
ホンブルグのほうが「エライ」のであります。
どなたかパール・グレイの、完璧なるホンブルグを作って頂けませんでしょうか。

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