白とシングレット

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

白は、ホワイトのことですよね。色の名前でもあります。
白がさらに崇高になりますと、「真白き」になるのでしょうか。

🎶 真白き富士の根 ……………………。

明治四十三年の『七里ヶ浜哀歌』の歌い出しであります。
作詞は、三角錫子。

明治四十三年一月二十三日。逗子開成中学のボートが転覆。十二人の生徒、全員死亡。
当時、「鎌倉女学校」に教師だった三角錫子が、鎮魂歌として作詞したもの。
それが後に、『真白き富士の根』の題でも、愛唱されるようになったものです。
「真白き富士の根」はそれほどに印象的な表現であったのでしょう。

やや特殊な言葉ですが、「ブランコ・ホワイト」Bl anc o wh it e 。これは革塗料の商品名。
十九世紀、英国陸軍での表現。事実「ブランコ」の商標名はあったのですが。また、「ブランコ」だけでも、「白」を思わせる言葉でもあったのですが。
当時の英国の軍装のひとつに、白の革ベルトがありました。この白い革ベルトは手入れが必要で、白い塗料を塗った。その塗料の商品名が、「ブランコ」だったのです。
ですから「ブランコ・ホワイト」は重語でもあるのですが、十九世紀の英国陸軍ではそんな呼び方があったという。
話は変りますが、ホワイト・シューズ。白靴。戦前の紳士はたいてい、盛夏には「白靴」を履いたものです。多くは麻製で、白の薬品を塗った。薬品とは大げさでしょうが、ガラスの子壜に入った歯磨き粉を溶いたような液体だったのです。
白靴が少しでも汚れるち、この白い液体を塗って手入れをしたものであります。
白が出てくる古書に、『男色大鑑』がありまして。井原西鶴が、貞享四年に発表した物語。
男色大鑑と書いて、「なんしょくおおかがみ」と訓むのですが。この中に。

「風俗地衣装にの外に替はりて、黒羽二重に白小袖、かさねて見る事もあかず。」

これはもちろん、若衆の着こなし。いつでもぱりっと着こなしていて、見飽きることがない。そんなふうに書いているわけですね。
この文章のすぐ後に続けて。

「一度に肌着も十の数を拵ゆる事、今の世の勤め子のせぬ事なり。」

そうも書いているのです。
ここでの「白小袖」は、今の長襦袢かと思われます。その「白小袖」の下に、「肌着」。その「肌着」を一度に十枚も誂えると、驚いているのでありましょう。
「肌着」はなにも日本のことだけではありません。
イギリスにも「肌着」はあります。イギリスでの「肌着」は一般に、「ヴェスト」v est 。
あるいは、「シングレット」 s ingl et 。これはアメリカで言うところの「Tシャツ」でもあります。また、「タンクトップ」の意味にもなります。
「シングレット」は、純然たるイギリス英語と言ってよいでしょう。
イギリス英語としては、1746年頃から用いられている表現のようですが。その意味でも、日本の「肌着」にも近いものかも知れませんね。
どなたか「真白き」シングレットを作って頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone