ぶらんことブラゲット

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ぶらんこは、鞦韆のことですよね。鞦韆と書いて、「しゅうせん」と訓みます。
ぶらんこを指すおしゃれな言い方に、「ふらここ」があります。ふらここはなぜか、秋の季語。

ふらここの 天より垂れて 人あらず

三橋鷹女の句にそんなのがあります。
俳句以外でも「ふらここ」がさりげなく口に出せるといいのですが。
いや、ふらここだけでなく、「鞦韆」だってなかなか使えそうにありません。

「彼と吾と、郷を同ふし、生年月を同ふし、共に一個の鞦韆に乗り、共に同一の小學に學び、共に同一の少女を争ひ……………………。」

徳冨蘆花が、明治三十年に書いた『自然と人生』に、そのように出ています。
徳冨蘆花は、「鞦韆」と書いて、「しゅうせん」のルビをふっているのですが。少なくとも明治三十年頃には、書き言葉の上では「鞦韆」が生きていたものと思われます。
一方、昭和になってからも、「鞦韆」が用いられた例があるのですね。というよりも
鞦韆に関しての一大論文。丸谷才一著『鞦韆記』。もし、昭和の鞦韆についてご興味おありのお方は、どうぞ丸谷才一の『鞦韆記』をのぞいてみてください。
ここでやはり明治期の鞦韆に戻るといたしましょう。

「………廣場の木陰には腰掛付の鞦韆なぞも出來て居たが、見渡す限り森閑として人の氣色も無い。」

永井荷風著『あめりか物語』に、そのように出ています。永井荷風は「鞦韆」と書いて、
「ぶらんこ」のルビを添えているのですが。
これは、アメリカ、タコマでの印象として。
鞦韆、ぶらんこの歴史は古いんだそうです。なんでも起源前三千年頃の、古代メソポタミアにも、ぶらんこがあったろうと考えられているとのこと。
フランスの画家、フラゴナールが、1767年頃に描いた絵に、『ぶらんこの絶好のチャンス』があります。当時の貴婦人がフリルの多いドレス姿でぶらんこに乗っている様子なのですが。
当時の紳士としては貴婦人のぶらんこは「絶好のチャンス」だと思われていたのでしょう。
フラゴナールの名画『ぶらんこの絶好のチャンス』には、たしかにそれを見物する紳士の姿が描かれています。ライト・グレイのキュロットを穿いて。
時にフランスで、キュロットの前開きのことを、「ブラゲット」br ag u ett e ということがあります。フランスの古語ではありますが。おしゃれ語のひとつであるのも間違いではありません。
どなたかブラゲットの美しいパンタロンを仕立てて頂けませんでしょうか。

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