ブリタニカとブレイザー

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ブリタニカは、百科事典の名前ですよね。『ブリタニカ百科事典』は、もっとも歴史が古く、もっとも信頼のおける百科事典という定評があります。
『エンサイクロペディア・ブリタニカ』は、1768年に、スコットランドのエディンバラではじまっています。この時代の『エンサイクロペディア・ブリタニカ』は、分冊式で、各巻がまとまるごとに出版されたのです。
結局、1771年に三巻本として完結しています。これは、快挙と言ってよいでしょう。ただし、値段のほうも高価で、よほど裕かな人でなければ買えなかったそうですが。
それにしても1760年代の、エディンバラの学識水準がいかに高かったかを、想像させるものでもありましょう。
百科事典ではありませんが、「小学館」の『日本国語大辞典』。あれが出版された時、いちはやく買い求めたひとりが、井上ひさし。井上ひさしが『日本国語大辞典』を愛読したこと、申すまでもありません。ある時、手洗いで読みふけっているうちに、落としてしまった。また、あらたに書いなおしたという。
手洗いの落としては困りますが、百科事典としては百科事典冥利に尽きる話でもありましょう。
百科事典は毎日のように使うものですから、丈夫でなくてはなりません。百科事典の頑丈さを実験する方法として。中の一ペエジを右手で持って、ゆっくり本全体を引き上げる。これでびくともしなかったなら、酷使に耐える百科事典といえるんだそうですね。
ブリタニカ百科事典に限らず、百科事典を「読む」ことは、勉強になります。そして、適度な体操にも。目指す項目の巻を探して、本棚から引き出し、拡げて読む。読み終ったなら、再び本棚に戻す。これはこれで結構な運動になるものです。
ブリタニカ百科事典が出てくるミステリに、『ロスノフスキ家の娘』があります。1982年に、ジェフリー・アーチャーが発表した物語。

「自分の部屋に引きとってエンサイクロペディア・ブリタニカを調べなければならないことが何度かあった。」

これは、ミス・トレッドゴールドの呟き。ミス・トレッドゴールドは、イギリス人女性で、フロレンティナ・ロスノフスキの、家庭教師という設定。ロスノフスキは、ポーランドからアメリカに移民してきた大富豪。その一人娘で、物語の主人公が、フロレンティナ・ロスノフスキなのです。
フロレンティナは頭脳明晰で、家庭教師をたじたじとさせる様子が語られているのです。
さすがにジェフリー・アーチャー、『ブリタニカ百科事典』を効果的に使っていますね。
『ロスノフスキ家の娘』には、こんな描写も出てきます。

「男は注文仕立てのジーンズをはき、カジュアルなオープン・ネックのシャツの上にブレザーを着ていた。」

これは、イタリア人の、ヴァレリオという若者の着こなし。
『ブリタニカ百科事典』で調べると、「b l az er 」として出ています。ごくふつうに訓むなら、「ブレイザー」かと思われます。
1880年頃、ケンブリッジ大学のボート部の制服がもとになっています。
古典的なブレイザーを着て、『ブリタニカ百科事典』の、第十一版を、探しに行くとしましょうか。

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