金モールとギンガム

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金モールは、金色のモールのことですよね。
では、モール m og ol とは何か、いうことになるのですが。
モールは時に、「シェニール」ch en ill e と呼ばれることもあります。毛虫にも似た糸なので、「シェニール」。
「モール」はポルトガル語の「モール」M og ol から来ているんだそうです。昔の「ムガール帝国」のこと。おそらくはムガール帝国からポルトガルに伝えられたものなのでしょう。

「………いさ川しまちりめんに、きんもふるのおび、くろちりめんの打かけ。いづれもみな、もみうらなり。」

享和二年に、十返舎一九が発表した『東海道中膝栗毛』に、そのような一節が出てきます。
享和二年は西暦の1802年のことですから、古い。
十返舎一九が、「きんもふる」と書いているのは、「金モール」のことでしょう。少なくとも江戸期には舶来品としての金モールがあったものと思われます。

「…………來賓は陸軍将校はもとより多數にて、金モールの寄合なれば、其きらめき渡りて壮麗なるは……………………。」

明治二十年『東京日日新聞』一月十九日号の記事に、そのように書いてあります。見出しは、『大山巌伯爵も 官舎で大夜會』。
軍服での正装が少なくなかったので、あちらこちらに金モールが煌めいていたのでしょう。
金モールが出てくる小説に、『ジェイン・エア』があります。1847年に、英國の作家、
シャーロット・ブロンテが発表した長篇ですね。

「そこにお持ちになっている普段使いのハンカチに金モールの縁どりをするようなものですから」

これはロチェスターに対する、ジェイン・エアの言葉とした。
ロチェスターはジェインに、宝石を贈る、薔薇の冠を贈るという。その言葉への返事として。
シャーロット・ブロンテは1846年に『教授』と題する小説を書いて、出版社に。ところが『教授』は出版社から送り返されてきて。
その送り返された原稿には、メモが添えられていて。
「もっと波瀾に富む物語を」
この一行にヒントを得てシャーロットが書いたのが、『ジェイン・エア』。これが後に空前のベストセラー、ロングセラーになったわけですね。
シャーロットの『ジェイン・エア』を読んでいますと、こんな科白も出てきます。

「それから結婚式には、この薄紫色のギンガムの服です。」

これまた、ジェインの、ロチェスターに対する言葉として。
ジェインは本気で「結婚式にはギンガム」と考えていたものと思われます。ここからは私の勝手な想像ですが。絹のギンガムではなかったでしょうか。
ギンガム g ingh am は、1615年頃からの英語なんだとか。これはマレー語で、「縞」を意味する、「ギンガン」g ingg ang から出ているとの説があります。
どなたか絹のギンガムでチョッキを仕立てて頂けませんでしょうか。

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