ビーズとピー・ジャケット

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ビーズは、飾りに使う小さな玉のことですよね。
球形だけでなく、角型や長方形もあります。ビーズの特徴は中に穴が開いていて、糸が通せるようになっていることです。
ビーズに糸を通して、縫うことによって、装飾となります。「ビーズ刺繍」というではありませんか。あるいはまた、ビーズのハンドバッグなどもあるでしょう。
ビーズ b e ads のもとの形は、「ビード」 b e ad かと思われます。たいていの場合、たくさんのビーズを集めて飾るので、「ビーズ」と複数形で呼ぶわけです。
日本語としての「ビーズ」は、いつ頃から用いられていたのでしょうか。おそらく、明治二十年代ではなかったでしょうか。

「白茶の西洋仕立の洋服に。ビイツの多くさがりたるを着して。」

明治二十一年に、三宅花圃が発表した『藪の鶯』の一節に、そのような文章が出てきます。
今の言葉で言いますと、ベージュのドレスを着ているわけですね。そのドレスの裾にビーズが飾られていることの形容なのでしょう。
三宅花圃は、「ビイツ」と書いていますが、前後の文章から判断して、「ビーズ」のことかと思われます。三宅花圃の『藪の鶯』は、少なくとも「ビーズ」の早い使用例と言って良いでしょう。

ビーズが出てくるミステリに、『四つの署名』があります。『四つの署名』は、1890年に、コナン・ドイルが発表した物語。もちろん、「シャーロック・ホームズ物」の第二作。
第一作はよく知られているように、ドイルが1886年に書いた『緋色の研究』であります。

「………まわりにけばけばしいビーズを糸に通したものがついていた。」

これは「バーソロミー」が持っていた提げ袋についての説明として。
余談ではありますが。コナン・ドイルは、この『四つの署名』を紙にペンで書いたんだそうです。
そのドイルの手書き原稿が、1909年にNYでのオークションにかけられて、105ドルで落ちたと伝えられています。12月9日のことでした。

この『四つの署名』を読んでいますと。

「「驚いたことに、ホームズが粗末な船員服の上に厚地のジャケツをはおり、首には品のよくない赤いスカーフを巻いた格好で……………………。」

これはワトソンから眺めてのホームズの様子。朝早く、ホームズが変装して、出かけようとしている場面。「小池 滋」版では「厚地のジャケツ」と訳されています。私の勝手な想像ですが、これはピー・ジャケットではなかったでしょうか。
もともとピー・ジャケットは古い時代に、オランダからイギリスに伝えられた船員服で、極厚の短外套だったものです。
冬の甲板には必要不可欠のコートだったのでしょう。また、ピー・ジャケットに不可欠のものが、「マフ ・ポケット」でありました。これは高い位置の両胸のポケット。
マフ ・ポケット m uff p ock et は手を温めるためのポケットで。高い位置につけられているので、姿勢を崩すことのないポケットだったのです。
どなたか本格的なピー・ジャケットを仕立てて頂けませんでしょうか。

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