ラヴとライル

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ラヴは、愛のことですよね。

🎶 ラヴ・ミ・テンダー……………。

1956年に、エルヴィス・プレスリーが歌った曲に、『ラヴ・ミ・テンダー』があります。ロックであろうと、バラードであろうと、「ラヴ」の出てこない曲は珍しいのではないでしょうか。
ラヴは古代英語では、「ラフ」l uf u だったとか。それは「強い愛着」の意味だったという。
ラヴはおしゃれ語とも無関係ではなくて。たとえば、「ラヴ・ロック」l o v e l ock 。これは女の人の、意図的な前髪の巻毛のこと。また、「ラヴ・ノット」と呼ばれる凝った結び方もあったらしい。
愛が出てくる小説に、『うもれ木』があります。樋口一葉が、明治二十五年に発表した物語。

「何とせば永世不滅の愛を得て、我れも君様も完全の世の過ぐさるべきと……………。」

明治の小説にあらわれた「愛」としては、わりあい早い例ではないでしょうか。
では、樋口一葉ご自身の「愛」はいかがであったのか。
樋口一葉は、1872年5月2日のお生まれ。そして、1896年11月23日に、二十四歳で、世を去っています。
一葉は決して少なくない『日記』を遺していますから、ある程度、「愛」についても窺い知ることができるでしょう。
樋口一葉は、明治二十四年四月、半井桃水にはじめて会っています。これは一葉が桃水の家を訪ねているのです。「小説を書きたい」と。
では、一葉はなぜ桃水を識ったのか。妹の邦子を通して。樋口邦子は、針仕事ができた。それで、半井桃水の着物を縫うことがあったんだそうですね。
たしかに桃水と一葉の間に「愛」があったのは、間違いないでしょう。
しかし、明治二十五年五月には、一葉が桃水に「別れ」を告げています。それは「萩の舎」でよくない噂になって。師の中島歌子に会うことを禁じられたので。
「萩の舎」は当時、一流の和歌の塾で、一葉は「萩の舎」でも優れた歌人だったのです。

明治二十九年。森 鷗外は、無名の、未知の樋口一葉の小説を手放しで絶賛しています。森 鷗外だけでなく、その頃の優れた文人は、一葉の才能に舌を巻いたようです。一年ばかりの間に、多くの名作を生んだ一葉。「愛」においては必ずしも幸福ではなかったのかも知れませんが。

「愛」が出てくる小説に、『ジャック・ランダ・ホテル』があります。1994年に、
アリス・マンローが発表した物語。日本語訳は、村上春樹。

「愛 ー 許し
 愛 ー 忘却
 愛 ー 永遠」

そんな文章が出てきます。
また、『ジャック・ランダ・ホテル』を読んでおりますと。

「………この暑さにもかかわらず、灰色のライルのストッキングをはいている……………。」

また、この文章の後に続けてすぐ。

「当世、いったいどこで灰色のライル系のストキングなんてものが見つけられるのだろう?」

そんな言葉も出てきます。
「ライル」l isl e は、高級綿糸のこと。フランスの地名「リール」から出た言葉。昔、この地で、上質のコットンが紡がれたので。
ライルはストッキングとは限らず、男の靴下にもよく用いられたものです。
どなたかライルの靴下を作って頂けませんでしょうか。

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