馬とウーステッド

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馬は、ホースのことですよね。馬は力の基準でもあります。「馬力」というではありませんか。仮に「百馬力」だとしますと、馬の力が百頭分ということなんですね。
本物の馬ではなくて、「木馬」の話。ウッドン・ホース。
『ドン・キホーテ』にも、木馬が出てきます。「クラビレーニョ・エル・アリゲロ」という名前の木馬。
『アラビアン・ナイト』には、黒檀製の木馬が。細かい所には象牙も使われていて。これは魔法の力を持っている木馬なんだそうです。
歴史上有名な木馬に、「トロイの木馬」があるのは、ご存じの通り。ギリシャ神話に登場する大きな木馬。この「トロイの木馬」は、ユリシーズが、エビオスに命じて作らせた木馬。
この巨大な木馬にはギリシャ兵が隠れていて。その中のひとり、「メネラオス」は、深夜に木馬を抜け出して、敵城の扉を開けさせた。そんな伝説が遺っています。

さて、ここからは本物の馬の話。
1941年の東宝映画に、『馬』があります。主演は、高峰秀子。監督は、山本嘉次郎。
この山本嘉次郎の助手だったのが、若き日の黒澤 明。
『馬』の撮影は三年にわたる過酷な撮影になったそうです。その時の様子は、高峰秀子著『わたしの渡世日記』に詳しく書かれています。

「だって、おかしいよ半分じゃ……………しょうがないから、あと半分も剃っちゃえば?」

ある日の朝。山本嘉次郎に高峰秀子が会うろと。髭が、半分。当時の山本嘉次郎は、コールマン髭がご自慢だったのです。寝ぼけなまこで髭を剃っていて、間違えたんですね。
山本嘉次郎に、髭を落とすように言ったのは、高峰秀子だったわけです。高峰秀子、十六歳のことでありました。
『馬』のロケ中、高峰秀子は卒倒。高峰秀子が気がついた時は、宿の部屋。この時、看病したのが、演出助手の、黒澤 明。黒澤 明は高峰秀子に、粉薬を飲ませようと。それでも高峰秀子は粉薬が嫌い。

「デコ、たのむから飲んでよ」

これは、黒澤 明の科白として。でも、デコは飲まない。で、黒澤 明は自分で実際にその粉薬を飲んで。

「ボケが飲んだんだから、なんでもないよ。安全だ、デコも飲みなさい」

これには高峰秀子も負けて、とうとう粉薬を飲んだという。
この『馬』の撮影中、高峰秀子と黒澤 明との間に、淡い恋心が生まれたのは、ほんとうだったようですね。

馬が出てくるミステリに、『標的』があります。1990年に、イギリスの作家、
ディック・フランシスが発表した物語。

「………問いかけるように鼻先を突き出している馬にニンジンを与えてぽんぽん叩きながら、愛情のこもった言葉をかけていた。」

『標的』もまた、競馬が背景に描かれる物語ですから、馬が登場するのは、当たり前なんでしょうが。日本語訳は、菊池 光。
また、『標的』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。

「………真剣なビジネスの話は地味なウーステッドのスーツで行なわれるものだ、と考えているような印象を与える。」

これは、ロニイ・カーズンという人物について。
ウーステッド w orst ed は、英国、ノーフォーク州、ノリッジに近い地名。今の「ウーステッド」の言葉は、1293年頃からの英語なんだそうです。
どなたか極上のウーステッドでスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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