フォレスティエは、人の名前にもありますよね。ことにフランス人の姓名の多いような感じがあります。
フォレスティエを、一般名詞だと考えてみますと。「フォレスティエ」forestier だと解釈すると、「森の」という意味になるんだとか。
そういえば、以前「フォレスティエ」という名前の上着がありました。立襟のゆったりしたジャケット。
その昔、アンドレ・ジイドが「アルニス」にやって来て、注文した上着。そんな話を聞いたことがあります。アンドレ・ジイドとしては、森番の着るジャケットの印象があったので、「フォレスティエ」と呼ばれるようになったんだそうです。
フォレスティエが出てくる小説に、『ベラミ』があります。1885年に、モオパッサンが発表した長篇。傑作という外ありません。時代を超えて遺る小説でしょう。
『ベラミ』の主人公は、ジョルジュ・デュロワ。このデュロワは、フォレスティエとの出会いから、人生の幸運がはじまるという筋書になっています。
デュロワがパリの街を歩いていて偶然に、フォレスティエと会う。そこから物語がはじまって。フォレスティエは、軍隊での戦友、先輩。今は新聞記者としては成功している人物と設定されています。
この『ベラミ』に、つぎのような描写が出てきます。
「………胸の甲が薄く、早くも皺ができているのが情けなかった。」
これはデュロワが着ている礼装用のシャツについて。
このシャツは、その日、ルーヴルで四フランで買ったシャツ。そうも説明されています。
今も昔も、礼装用のシャツは、胸が二重になって、堅く仕上げられています。
「甲」は、「プラストロン」と呼ばれます。シャツの胸を堅くすることで「下着ではありません」と表明するために。
どなたかプラストロンの美しいシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。