野草とヤンケル

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野草は、野の草のことですよね。たしかに野草なんですが、よく見ると名前も知らない花が混じっていたりすることもあります。
昔むかし、郊外でコンサートが開かれて。郊外とはいってもほとんど「山の中」と言いたい場所。そして、そのコンサートに知人が出演していたのです。私は迷ったあげく、野草を紙に包んで、差し上げたことがあります。近くに花屋が見つけられなかったので。
たぶん「ヘンな奴だなあ」と思われたことでしょうが。

『野草』と題する随筆集があります。1929年に、魯迅が書いたエッセイ集。

両岸には、はぜの木、若稲、野草の花、鶏、犬、雑木林と枯木、わら家………。

魯迅は、『野草』の中に、そんなふうに書いています。。これは以前、魯迅が山陰道を舟で通った時の記憶として。
『野草』は、その頃の魯迅の心境を認る上で、貴重な資料でしょう。でも、どうして『野草』の題名なのか。

「だが私は、心うれえず、心たのしい。高らかに笑い、歌をうたおう。
私は野草を愛する。」

この随筆集のはじめに、そのように書いています。
「野草を愛する」。だから、題名に『野草』を選んだのでしょう。どんな時にも。

「高らかに笑い、歌をうたおう。」

私もまた、そんな「野草の心」で生きたいと願っているのですが。

野草が出てくる物語に、『カンポ・サント』があります。2001年に発表された、W・G・ゼーバルトの散文。

「………やがて雑草が生えていることに気がついた。からすのえんどう、麝香草、白詰草、鋸草、カモミール………」

これは主人公が「カンポ・サント」を歩いていて。ここでの「カンポ・サント」は、「聖苑」の意味なんだそうですが。
また、『カンポ・サント』には、こんな文章も出てきます。

「母が私に緑色のヤンケルを仕立て、格子柄の生地でリュックサックを縫ってくれた。」

これは旅立ちの前の日に。
「ヤンケル」janker は、いわゆる「ドイツ背広」のこと。ちょっとチロリアン・ジャケットにも似ているものです。
どなたかヤンケルを仕立て頂けませんでしょうか。

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