タブーとダスト・コート

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タブーは、してはいけないことですよね。禁忌とも書くんだそうですが。
英語なら、taboo 。これはもともとポリネシア語の「タプー」ta pu から出ているんだとか。「タ」は印をつける。「プー」は、「区切る」。
つまり、「区切られた場所の印をつける」。そんな意味からはじまっているらしい。最初は、「聖域」を指す言葉だったのでしょうか。
1771年に、キャプテン・クックがこの「タプー」を知って、やがて英語の「タブー」になったと考えられています。

「………ここ三日といふもの口に出すことが禁忌に属してゐた美代の不在が………」

三島由起夫が、昭和二十五年に発表した小説『愛の渇き』に、そのような一節が出てきます。
三島由起夫は「禁忌」と書いて、「タブー」のルビを添えているのですが。
三島由起夫はある時、大阪に住む叔母のひとりから、他愛ない世間話を聞いて、ふっと構想が浮かんだそうです。そんなこともあって、『愛の渇き』の背景は、大阪の郊外に置かれています。

「一同は二級ウイスキーを注いだグラスをあげて乾盃した。」

『愛の渇き』には、そんな描写も出てきます。
登場はウイスキイにも等級があったのです。ちょうど日本酒に特級や一級があったように。「特級ウイスキイ」もあったのです。
三島由起夫は『愛の渇き』を、1950年5月17日に、完成させています。

タブーが出てくる本に、『言葉のおしゃれ』があります。楠本憲吉が、昭和六十年に発表した教養本なのですが。この中に『手紙のタブー』という章が含まれています。

「誤字、脱字、当て字、間違ったくずし字。」

もちろん、手紙のタブーとして。日頃、誤字、脱字などの多い私としては耳が痛いことであります。

楠本憲吉の『言葉のおしゃれ』には、コペンハーゲンの話も出てきます。楠本憲吉がコペンハーゲンを旅した紀行文として。

「七月だというのに、ダスターコートの襟を立てて歩きたくなるような、とりわけ、旅行者にとっては人肌恋しい、晩秋を思わせる気候の町を歩いていると………」

いうまでもなく、コペンハーゲンでの気候について。
ダスターコート。1950年代の日本でずいぶんと流行ったものです。
正しくは、「ダスト・コート」dust coat でしょうか。「ダスター」duster とも。
たいていはリヴァーシブル仕立てで、それがまた、粋に感じられたものです。
もともとは十九世紀末の英国で、自動車に乗るための上っ張りだったのですが。
どなたか195 0年代のダスト・コートを再現して頂けませんでしょうか。

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