香水は、パーフュームのことですよね。
per fume と書いて、「パーフューム」と訓みます。この言葉はもともと、「ペルフーマ」perfumar
から来ているんだそうですね。その意味は、「煙を通して」。
つまり香水ではなく、「香木」だったのでしょう。薫りの佳い木を燃やして、その匂いを愛でたに違いありません。
その後に、「香油」があらわれていますいわゆる「香水」が生まれたのは、十二世紀のことだと考えられています。
1923年に、古代エジプトの、ツタンカーメンの墓が発見されたことがあります。英国の考古学者、カーターによって。この時、同時に香料壺も。カーターが香料壺を開けると、四千年前の薫りが立ちのぼったと、伝えられています。当時すでにアレクサンドリアには、香料を造るための工場があったという。
1910年頃、巴里のフランソワ・コティーが、香水をつくっています。「ラ・ロオズ・ジャックミノオ」を。それをある百貨店に置いてもらおうと。でも、やんわりと断られて。
フランソワ・コティーはその香水壜をうっかり床に落として。その薫りに気づいた客は、皆その香水を求めた。そんな伝説もあります。
香水が出てくる長篇に、『ユリシーズ』があります。1923年に、ジェイムズ・ジョイスが発表した物語。
ただし、物語の背景は、1904年6月16日に置かれているのですが。たった一日の出来事を長篇に仕上げただけでも、ジェイムズ・ジョイスの天才が窺えることでしょう。
「あなたの奥さんはどんな香水を? 《スペインの肌》ってやつ。あのオレンジフラワー。」
そんな会話が出てきます。その時代のダブリンには、「ハミルトン・ロング薬局」という店があって、ここで香水も調合してくれたんだそうですね。
また、『ユリシーズ』には、こんな描写も出てきます。
「彼が内幕話をはじめると、真っ赤な花模様のコール天のシャツがスペインふうの房飾りをふるわせる。」
「コール天」。もちろん、コオデュロイのことでしょう。たぶん、ピンウエイル・コオデュロイ。
どなたか細畝の、花柄のコオデュロイでシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。