ブリキとブトン

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ブリキは、亜鉛板のことですよね。昔は、「武力」の文字を宛てたこともあるんだとか。
鉄に錫をメッキしたものが、ブリキ。鉄に錫をメッキした板のことを、トタンとも。トタンとブリキ。いったいどこがどう違うのか、私には分かりません。
ブリキはその昔、オランダ語の「ブリッキ」bliki から出たとの説があります。
一方、トタンは。ポルトガル語の「トゥタンガ」tutanga からはじまっていると、ものの本には出ています。

「教師は別に樅の机の前に、四方栗のぶりきおとしの小火鉢をひかえ………」

明治二十三年に、尾崎紅葉が発表した短篇『猿枕』に、そのような一節が出てきます。
「四方栗」は、栗の木の火鉢。「ぶりきおとし」は、ブリキの内張りのある火鉢のことでしょう。

「翌日宗助が眼を覚ますと、亜鉛張の庇の上で寒い音がした。」

明治四十三年に、夏目漱石が発表した小説『門』に、そのような文章が出てきます。
夏目漱石は「亜鉛張」と書いて、「とたんばり」のルビを添えているのですが。
明治の頃から「ブリキ」もあり、「トタン」もあったものと思われるます。オランダにもポルトガルにも、敬意を表すために。
ブリキが出てくる小説に、『ピエレット』があります。1839年に、フランスの文豪、バルザックが書いた物語。

「凝った切抜き細工をほどこしたペンキ塗りのブリキ板の小さな扉がこの通風窓を閉じていた。」

とある郊外での屋敷の様子として。物語の年代は、1827年におかれているのですが。
また、『ピエレット』には、こんな描写も出てきます。

「チョッキと上着についている白い角製の大きなボタンは、ピエレットの胸をドキドキさせた。」

これは「ブリゴー」の着ている服装の様子。
「白い角製」。もしかしたら水牛の角なのでしょうか。ホーン・ボタン。フランスなら、「ブトン」、bouton でしょう。
どなたか角製のブトンの付いた上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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