チュールとチェヴィオット

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チュールは生地の名前ですよね。薄い、半透明の布地。
tulle と書いて「チュール」と訓みます。もともとは地名の「チュール」から来た言葉なんだそうですが。
「チュールリ」tullerieとなれば、「チュール製造業」の意味になるんだとか。
チュールは花嫁衣裳には欠かせないものでしょう。たとえば、チュールのベール。チュールのウエディング・ドレス。

「子供たちはロビーの窓から外を眺めるために、薄いチュールのカーテンをもちあげ………」

1968年に、金井美恵子が発表した短篇小説『自然の子供』に、そんな一節が出てきます。なるほど、カーテンにもチュールがありますね。
チュールが出てくるモード雑誌に、『最新流行』があります。

「貴女方のローブは、あらゆる色合いの絹のチュールの、でもとくに白の服です。」

1874年『最新流行』第六号に、そのような文章が出てきます。
『最新流行』は1974年9月に創刊されて、第八号まで続けられたモード雑誌。
このモード雑誌をはじめたのが、マラルメ。フランスの偉大な詩人、ステファヌ・マラルメ。すぐには信じられないことですが、ほんとうの話。
事実上の編集長も、マラルメ。また、いくつかのペンネームで、ファッション原稿をもマラルメが書いています。今となっては『最新流行』は、貴重品でしょう。

「………やはり全色そろっているカシミヤ類、軽い薄手の毛織物、チェヴィオット(ツイード)、スコットランドの格子柄や………」

少女向きの外出着として、それらを薦める文章になっています。これは『最新流行』の第六号に出ているのですが。書き手はもちろん、マラルメでしょう。
少なくとも1874年の巴里で、チェヴィオットが流行だったことは間違いないでしょう。
「チェヴィオット」cheviot
はトゥイードの一種。イングランドとスコットランドの境界に近い山地。チェヴィオット・ヒルズの名前があります。標高は、約八百メートルほど。「チェヴィオット・シープ」は、寒さに耐える優秀な毛質を持っているのです。
どなたかチェヴィオットの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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