ロンドンとロケット

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ロンドンは、大英帝国の首都ですよね。英文学を学ぶには最適の場所でしょう。事実、ロンドンで英文学を学んだお方は、数多くいらっしゃいます。
たとえば、夏目漱石だとか。明治三十三年に、ロンドンに留学しています。西暦の1900年のことです。今からざっと百二十年ほど前のことになります。
ロンドンでの漱石の暮しぶりがどうであったのか。これは割合によく分かっています。漱石の随筆に、『倫敦消息』が遺されているからです。
漱石の『倫敦消息』は、当時の俳句雑誌『ホトゝギス』に連載されたもの。実際は、正岡子規に宛てた手紙だったのですが。
これは一例ですが、正岡子規と夏目漱石とが、いかに親密な関係だったかが、窺えるでしょう。

「夫から「ベーコン」が一片に玉子一つ又はベーコンニ片と相場がきまつて居る。其の外に焼パンニ片茶一杯、夫で御仕舞だ。」

ロンドンでの下宿の朝食について漱石は、そのように述べています。もっともその前にオートミールを食べることも。
スコットランドでのオートミールは塩で食べる。でも、ロンドンでは砂糖を加えて食べるなどの、説明もあります。

「先達て「ロッチ」から古本目録をよこした「ドッズレー」の「コレクション」がある。七十円は高いが欲い。」

そんな話も出てきます。「ロッチ」はロンドンの古書店なのでしょう。そこからカタログが送られてきて。「七十円」は、今の七千円でしょうか、七万円でしょうか。
その時代の漱石は、国から十五ポンドを支給されていて。なかなか倹約を強いられていたようです。
アメリカに生まれ、ロンドンに住んだ作家に、ヘンリー・ジェイムズがいます。1843年にアメリカに生まれ、1876年にはロンドンに移住して。以来四十年をロンドンで過ごしています。
1871年に、ヘンリー・ジェイムズが発表した短篇に、『情熱の巡礼』があります。この中に。

「値うちものの金鎖のついた懐中時計、印を刻んだロケット、金細工の小物類………」

これは「ローソン氏」の持物として。
「ロケット」locket は、ペンダント・トップ。ことに蓋が開くようになっているもの。ここに写真などを入れておけるわけです。
どなたか男に似合いそうなロケットを作って頂けませんでしょうか。

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