島には夢がありますよね。
青い海に囲まれた島。白い砂浜の島。緑の草花に彩られた島。この広い地球上に、いったいどれほどの数の島があるのでしょうか。
その中のひとつに、神島があります。三重県、伊勢湾に面した島。今の人口約五百人ほど。昭和二十八年三月に神島を訪れたのが、三島由紀夫。三島由紀夫は同じ年の八月にも、神島へ。なにか作家として、閃くところがあったのでしょうね。
そして翌、九月から書きはじめたのが名作、『潮騒』。昭和二十九年四月四日に完成。
「歌島は人口千四百。周囲一里に充たない小島である。」
これが物語の第一行。「歌島」が実際には神島であるのはもちろんです。もっとも古い時代には「歌島」 ( かじま ) と呼ばれたのだそうですが。小説では、歌島 ( うたじま ) になっていること言うまでもありません。
ヨーロッパの島のひとつに、ゴゾ島が。Gozo。かの有名なマルタ島からフェリーで30分の距離にあります。ゴゾ島もまた、風光明媚な場所として知られています。
ゴゾ島には今なお天然自然が遺っていて、たとえば塩。とにかく海に囲まれているわけですから、海水から天然塩を作っています。日照にも恵まれて、葡萄がたわわに実る。葡萄が実るということは、ワイン。ゴゾ島には美味しい地ワインがたくさんあります。そしてまた、チーズ。ゴゾ・チーズ。これは羊や山羊の乳で造る、小さくて、丸い形のチーズ。
チーズがあって、ワインがあって、天然塩を使ったパン。もうこれだけでも充分なくらいです。ゴゾ島は、この世の楽園のひとつでしょう。ゴゾ島を愛し、ゴゾ島に住み、ゴゾ島で書いた作家が、A・J・クィネル。この楽園から多くのベストセラーが生まれています。そのために、一時期、A・J・クィネルの愛好家がゴゾ島詣でをしたほどです。
そのA・J・クィネルが、1999年に発表したのが、『トレイル・オブ・ティアズ』。この中に。
「いつも渋いスーツを完璧に着こなしている。ひとつだけ目立つものは明るいペーズリー織りのボウタイだった。」
これは優れた脳外科医の、ジェイソン・キーンの様子なんですね。
お気に入りの蝶ネクタイを結んで。美しい島に旅したいものですが……。