ウインザー公は、紳士服飾の20世紀のスタイルやトレンドに大きな影響と功績を残した。それは21世紀の現代でも、燦然と輝き続けている。そんなウインザー公へのオマージュも込めて、選びぬいた情報や製品をセレクトしてお伝えします。
服装に疑問を感じた時、アラン・フラッサーの存在が。彼のカラーコーディネートやバランス感覚、服飾の体系化等は、紳士の装いが何たるかを再認識させてくれる。また、彼もウィンザー公を強くリスペクトしていたので、今回はアラン・フラッサーについての考察を……
アメリカ人アラン・フラッサー(1945〜)は大学卒業後、ヴァン・ヒューゼン社(シャツメーカー)のスタイリスト、後にデザイナーを経て1979年に独立。そしてアラン・フラッサーのブランドを確立し、映画『ウォール街(1987年)』のマイケル・ダグラスの衣装も担当。また1985年「コティ賞」、1987年「カティ・サーク賞」と言う当時のメンズファッションの特別賞も受賞している。
彼が活躍し始める1970年代後半からのアメリカでは「保守的な服装」、つまり日本解釈の「トラッド」と言われるスタイルから、より個性を主張する男の装い方が求めらる。
1979年のチャールス・ヒックス氏(ファッション ジャーナリスト)の本「DRESSING RIGHT」では、服装のカジュアル、フォーマル、素材、柄、色、そしてワードローブ等、時代の進化の中で、何を選び、どのように着こなすかが、詳細に記されていた事からも男性の装いに大きな変化が到来した時期でもあった。
アラン・フラッサーの服装哲学には、ブルック・ブラザース等に代表されるアメリカン・トラディショナルをベースに、斬新なカラーコーディネートや着用者の体格等にも注力した独自の服装全般へのバランス感覚があった。
日本でのアラン・フラッサー・ブランドは、オンワード樫山やリーガルコーポレーションが担当。しかし、時代の流れはパリのサンローラン リブゴーシュ オム、ロンドンのトミー・ナッター等に始まり、やがてイタリアのアルマーニ、ヴェルサーチ、アルビーニと言ったデザイナーによるメンズファッションが台頭した頃で、アラン・フラッサーのスタイル重視の服装提案は、ごく少数派の支持に終わったようだ
しかし、その後のアラン・フラッサーは複雑に進化し続ける男性の装いに対して、1985年「Clothes and the Man: The Principles of Fine Men’s Dress」と言う、男性の装いを体系化したハードカバーの本を。さらに2002年「Dressing the Man: Mastering the Art of Permanent Fashion」も手掛け、紳士服飾の歴史的なアーカイブを紐解き、正統な服装基準を世の中に知らしめたと言えるだろう。
近年のアラン・フラッサーはメンズウェアのオーソリティーとして、テレビ出演やパーソナルなスタイリング等で活躍中。少々太り気味の体系からも健康状態が気になるが、今後の紳士服飾への新たな提言を希望したいものだ。