詩を時に味わってみるのも、いいものですよね。
詩は「想い」そのものですから、そこからさらに想いが漣のように拡がるのでしょう。
名詩から名曲が生まれるのも、当たり前のことかと思われます。詩から想を得た曲、けっして少なくはないのでしょう。
『夜のガスパール』は、その代表例であるかも知れませんね。モーリス・ラヴェルの作曲。1908年の作。
『夜のガスパール』は、フランスの詩人、ルイ・ベルトランの詩。原題も、『ガスパール・ド・ラ・ニュイ』。1842年に刊行されています。ルイ・ベルトランは1841年に世を去っていますから、その翌年に出版されているわけですね。
詩集『夜のガスパール』は誰もが目を通しているものではなかった。ラヴェルに『夜のガスパール』を見せたのは、ヴィニェス。リカルド・ヴィニェス。ヴィニェスはピアニストだったのですが、その一方で文学青年でもあって。知る人ぞ知る『夜のガスパール』を読んでいたのでしょう。
ラヴェルは『夜のガスパール』を読んで、うたれた。で、さっそく曲を創ることに。その意味では『夜のガスパール』を有名にしたのは、ラヴェルだったと言えるでしょう。
「おおスカルボ、銀貨を思わせる月が空に照る真夜中………」
これは『夜のガスパール』の、「スカルボ」と題された詩のはじめの部分。もちろんラヴェルの『夜のガスパール』の第三曲、「スカルボ」の想を生んだ一節なのです。
モーリス・ラヴェルの『古風なメヌエット』がパリで演奏されたのが、1901年のこと。
1901年にロンドンにいたのが、夏目漱石。
「天気快晴愉快 夏服をつける 麦藁帽の人多し ブラウスのレディもあり………」
夏目漱石は4月23日の『日記』に、そのように書いています。ただし原文は正字旧仮名になっているのですが。
少なくとも4月23日に。ロンドンで夏目漱石は「夏服」を着たことが分かるでしょう。もしかすれば、漱石自身もストロー・ハットだったのかも知れませんね。