熱愛ということも、あるんでしょうね。「熱烈なる愛情」なんでしょうか。「熱心なる愛情」なんでしょうか。「熱で溶ける愛」なんでしょうか。
「熱愛」から想い浮かべる人に、ナボコフがいます。ウラジミール・ナボコフ。ナボコフは1899年に、ロシアに生まれています。でも、大きくなってからの教育は、英国で受けています。ケンブリッジ大学で。1919年からのことですが。
ケンブリッジ大学卒業後の、1925年に、ヴェーラ・スローニムと結婚。結婚後、ヴェーラと離れている時には、ほとんど毎日のように、手紙を書いています。いや、一日に二回ということもあったようですね。その手紙はほとんどで英文の、手書きだったという。
「僕の愛しい人よ、いったいどうなっているのだ。もう四日も手紙をもらっていないよ。」
1937年3月30日のヴェーラに宛てた手紙は、そんな風にはじまっています。この手紙は、その時住んでいた巴里の、ヴェルサイユ大通り130番池の住所になっているのですが。そしてこの手紙のおしまいには。
「愛しているよ。君なしに生きていくのはとてもむずかしい。」
そんな風に書いています。ナボコフの手紙といえば。著書『プニン』の挿絵についての手紙もあります。
「両肩はパットを入れ、幅広く、角張ったものにしてください。」
これは、1956年10月1日の手紙。編集者、ジエイソン・エプスタイン宛ての手紙なんですね。細かく服装を指示しています。
ナボコフが出てくる小説に、『初夜』が。イアン・マキューアンが、2007年に発表した物語。この中に。
「細い、ニットの、ダークブルーのネクタイで、ほとんどいつもそれに白のワイシャツだった。」
これは主人公の、エドワードの好み。なにか一本、「熱愛」のネクタイ、欲しいものですよね。