戀とコンプレ

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戀とは佳きものなんでしょうね。戀もまた古い言葉のようで。「戀ふ」から変化して「戀ひ」になったんだとか。そもそものことを申しますと、なにも人とは限らなったらしい。言葉が古いだけに、いろんな形容もあるみたいです。たとえば、「戀の鞘当」だとか。
あるいはまた、「戀の煙」。戀の煙と書いて、「こひのけぶ」と訓んだそうですが。もちろん、「戀ひ焦がれる」の意味。そういえば、アメリカにも、『スモーク・ゲット・イン・ユア・アイズ』の歌がありますよね。まあ、このあたりの想いはいずれも似ているのでしょうか。
フランスには、「戀は無断」の言い方があるんだそうです。

「あの人を好きになったときは、戀が私の胸にやって来たの。今はもう愛していないのは、戀が去ってしまったから。戀は無駄でやって来て、無駄で去ってしまう。私が悪いんじゃないわ。」

ピエール・ド・マリヴォーが、1723年に書いた戯曲『二十の不実』の中の、有名な科白。で、「戀は無断」。すべては無断がいけないというわけであります。

「戀はラテン語でアモールという
そこで戀から死 (モーレ) が生まれる。」

スタンダールの『赤と黒』にそんな科白が出てきます。まあ、1830年の話ですからね。また、『赤と黒』には、こんな一節も出てきます。

「この金で、息子さんを羅紗屋のデュランのところへやって、三つ揃いの黒服を作らせたらいいでしょう」

これは、レナールという人物の言葉。金額は、百フラン。これは、たぶん、ヴェストン・コンプレのことなんでしょう。
なにか戀が無断でやってくるヴェストン・コンプレ、一着欲しいものですね。

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