ブローグは、靴のひとつですよね。スコットランドにはじまる、頑丈この上ない革靴。
1760年代に、英國のサミュエル・ジョンソンは、スコットランドに旅しています。この時の案内人、同行者が、スコットランド生まれの、ジェイムズ・ボズウエル。
サミュエル・ジョンソンは、この時のスコットランドの旅で、すでに原型としての「ブローグ」が使われていることを、報告しています。
つまりスコットランドには、十八世紀には、「ブローグ」の原型があったものと考えてよいでしょう。十八世紀の、ジョンソンが見た「ブローグ」は、自家製のものであったそうですね。つまり、自分の履く靴は自分で作ったらしい。
ブローグ br og u e の特徴である、飾り穴はもともと水はけのためであったという。いわゆる「パーフォレイション」ですね。
それが今では、英國紳士にふさわしい靴とされるのは、面白いものです。英國紳士はなんでも物を大切に使うことになっていて。ブローグも上手に履けば、軽く一生物になるからだと思います。何度も何度も底を張り替えて、貫禄充分のブローグは、まさに宝物でありましょう。
ブローグらしきものが出てくるミステリに、『ハートの刺青』があります。1957年に、エド・マクベインが発表した物語。
「黒い靴はぴかぴかに磨かきぬかれ、靴下はゴムつき靴下の時代には珍しく、ガーターできちんととめられている。」
私は勝手に、「黒い靴」はブローグではないか、と。ブローグはぴかぴかに磨きぬくのはなかなか大変なものですからね。
そうそう、1940年代以前には、「ガーター」で靴下を吊ったものです。イギリスでは同じものを、「ソックス・サスペンダー」と呼ぶのですが。
また、『ハートの刺青』には、こんな描写も出てきます。
「彼は濃いブルーのトレンチコートを着、雨にぬれて乱れた髪が…………………。」
なるほど。ブルーのトレンチ・コートも良いですね。
ダーク・ブルーのトレンチ・コートに、ブローグと参りますか。