アンデルセンは、童話作家ですよね。ハンス・クリスティアン・アンデルセンに外なりません。デンマーク、フューン島、オーデンセに生まれています。
1805年4月2日のことです。お父さんは、若い靴修理工であったと伝えられています。アンデルセンが生まれた家はけっして裕かな家庭ではなかったようです。でも、『アンデルセン自伝』を読んでおりますと。
「私は一人っ子で、たいそう甘やかされた。母の小さい時とはうってかわって幸福で、まるで伯爵さまのお坊ちゃまのようだったと、母からいつも聞かされた。」
アンデルセンは『自伝』の中に、そのように書いています。
幸福。それは、見方によって大きく変ってくるものなのででしょう。幸福だと想う人が幸福。これはほんとうのことかも知れませんね。
ここで話は少し飛ぶのですが。
1847年の5月。四十二歳のアンデルセンは、英国に旅しています。そして、憧れのディケンズに会っています。ディケンズは、稀なる才能の詩人を大歓迎したそうです。
その時、たまたまディケンズも高く評価している『即興詩人』の話になって。『即興詩人』の印税がいくらだったかを、ディケンズはアンデルセンに訊いた。アンデルセンは正直に、19ポンドだった、と。それに対するディケンズの反応。
「あの作品、あの『即興詩人』ですよ、あれにたいしてたった十九ポンドしかお受け取りにならないなんて、考えられない。」
ディケンズは最初、19ポンドは、原稿一枚についての金額だろうと、思ったそうです。それが一冊分の印税だと知って驚いたわけですね。
『即興詩人』。日本人は幸福な民族です。アンデルセンの『即興詩人』が、森 鷗外の日本語訳で読めるのですから。
「老いたる僧官達は紫天鵞絨の袍の領に貂の白き毛革を附けたるを穿て」
ここでの「貂」は、アーミンermin のことです。世界でももっとも高貴な毛皮とされるものです。
どなたかアーミンの外套を仕立てて頂けませんでしょうか。