ストーヴは、暖房器具のことですよね。昔、「アラジン」の石油ストーヴをよく使った記憶があります。
石油の前には石炭や薪などを燃やしたものでしょう。とにかく直接の暖房ですから、暖かい。第一、燃えている火が見えるのですから、視覚的にも温めてくれます。
夏目漱石も寒い時にはストーヴを使ったようですね。
「昼飯を食つてストーブの前で、バリー、ペーンの滑稽物を読んでいると………」
夏目漱石の『吾輩は猫である』に、そのような一節が出てきます。
ここでの、「バリー、ペーン」は、英国のユウモア作家、「バリー・ペイン」を指しているようです。
また、『吾輩は猫である』には、バルザックの話も出てきます。
ある時、バルザックは題名に難儀していた。が、友人がやって来たので、一緒に散歩に出た。バルザックは題名のことがあるから、街の看板ばかりを眺めていて。
その中のひとつに、「マーカス」という洋服屋の看板がお気に召した。
バルザックが1840年に書いた『Z・マルカス』は、ここから出ているんだとか。
ストーヴが出てくる物語に、『移動祝祭日』があります。アーネスト・ヘミングウェイの作品。舞台は1920年代の巴里になっています。一種の回顧録で、『移動祝祭日』を読むと、巴里時代のヘミングウェイのことがかなり分かってくるでしょう。
「タウベの客室は広々としており、大型のストーヴや大きな窓、暖かい毛布と羽毛の掛け布団の備わった大型ベッドがあって………」
ヘミングウェイは『移動祝祭日』の中で、そのように書いています。これはスイスでの宿、「タウベ」の様子。この時、ヘミングウェイはスイスにスキーを愉しみに行っているので。
また、巴里での生活についても。
「妻も寒い場所でのピアノの練習に出かけのだが、セーターをたっぷり着込んで暖かくしてピアノを弾き、帰宅するとバンビの世話をする。」
ここでの「妻」は、ヘミングウェイの最初の奥さん「ハドリー」のこと。ピアノの練習室は菓子屋の地下にあって、寒かったらしいので。もしかしたら何枚かのスェーターを重ね着していたのでしょうか。
どなたか一枚で充分暖かいスェーターを編んで頂けませんでしょうか。