ローストビーフは、牛肉の料理ですよね。牛肉を大きな塊のままで焼き上げます。外側はこんがり、中はピンク色というのが、理想なのでしょう。
ローストビーフroast beef は1635年頃からの英語なんだそうですね。ローストビーフは英国を代表する料理の印象があります。
フランスで、「ロス・ビフ」les rosbifs というと、「イギリス人」の意味になるんだとか。
いや、日本人だってローストビーフを食べることもありますが。ローストビーフの専門店に、「ローストビーフ鎌倉山」があるほどですから。文字通り、高台にあって、空気からしてからが美味しい店ですね。
「ニューグランドで一人食事、カレースープに、松茸と舌平目のピラフ、ローストビーフ、プディング。」
『古川ロッパ 昭和日記』にそのように出ています。昭和十一年十月二十八日のところに。
この食事の後、古川ロッパは銀座のバア「ルパン」に、一人で寄っているのですが。
「ニューグランドに寄り、ポタアジュ、コールドラブスター、スパゲッティ、ローストビーフにヨークシャープディングとアイスクリーム。」
昭和十二年五月六日、木曜日の『日記』に、そのように書いてあります。この日は、お母さんの誕生日だったので。
この食事の前に、お母さんと一緒に、「日劇」の芝居を観ています。演題は、『江戸ッ児健ちゃん』。その時のロッパの感想。
「エノケンより、中村正常の娘メイコなる少女巧まざる演技(?)には涙が出るほど感激した。」
中村正常は、当時、小説家だった人物。その娘が、中村メイコだったのですね。
ローストビーフが出てくる小説に、『エデンの東』があります。1952年に、ジョン・スタインベックが発表した物語。
「幸い、アダムは医者のティルスンが夕食についているところを見つけて、ローストビーフのごちそうから彼をひきずり出した。」
これは「キャッシー」が急病になったので。
『エデンの東』が1955年に映画化されたことは、言うまでもないでしょう。この映画の中で主演の「キャル」を演じたのが、ジェイムズ・ディーン。アダムの息子という役柄でありましたね。ジェイムズ・ディーン、二十四歳の時に。
ワーナー・ブラザースは1954年4月30日に、出演料の一部として、700ドルをジミーに与えています。
ジェイムズ・ディーンは結局、この『エデンの東』での演技が認められて、たちまちスタアとなってゆくのは、ご存じの通り。
若き日のジミーは、家庭の事情から、叔父のオーテンス・ウインズローによって育てられています。このオーテンスの妻が、マーカスで。マーカスの得意料理が、ローストビーフ。ジミーはローストビーフで大きくなった。そうも言えるのかも知れませんね。
ジョン・スタインベックの『エデンの東』を読んでおりますと、こんな一節が出てきます。
「それを美しいローン・ハンカチーフの一枚に包むと、彼女は部屋を出ていった。」
これは金時計をハンカチーフに包む場面として。女性の名前は、「ケイト」。
ローンlawn はごく薄い平織綿布。その昔、フランスの「ラン」laon ではじまった織り方なので、「ローン」。
もちろんハンカチーフだけでなく、シャツ地にも。
どなたかローンのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。