珈琲とコールテン

珈琲は、嗜好性の飲物ですよね。
誰にすすめられるまでもなく、自ら好んで飲むものですから。
一杯の珈琲は、気分を新鮮にしてくれるところがあります。
人生の句読点。
珈琲には、ルンバが似合うのでしょうか。
♪ むかしアラブのえらい王様が………
1961年に、西田佐知子が歌ってヒットした『コーヒールンバ』の歌い出しですよね。
『コーヒールンバ』とは別に、珈琲はエチオピアではじまったとの説があります。
昔むかし、ある時、羊飼いの少年が、羊たちが騒いでいるのに気づいて。それはコーヒーノキの赤い実を食べたせいで。
人は羊に教えられて珈琲を食べるようになったのでしょうか。
でも古代の珈琲は、煎るということがありませんでした。
赤い実の中の薄茶色の種をそのまま口に入れていたのです。
そのうちにコーヒーの種を湯で煎じるように。
ある時、山火事があって。コーヒーノキが燃えて。
その焦げた種を使って湯を注ぐと、コクがあった。
ここから今の焙煎がはじまったとのこと。
ただし種を粉にするのは、もっと後の話。
種を粉に砕くようになってからも、濾すことはありませんでした。
大鍋でコーヒーの粉を煮て、カップに注ぎ分けた。そして、その上澄みだけを飲んだのですね。
コーヒーの粉を濾すようになったのは、十三世紀以降のこと。
今の言い方なら、「トルコ式コーヒー」というこ
とになるでしょうか。
トルコ式コーヒーの場合、カップの底にカスが残る。
この残ったカスで占うのが、コーヒー占い。
若い頃、コーヒー占いを観てもらったのが、クリスチャン・ディオール。
「あなたはやがて女性によって大成功し、世界中で名を識られるようになります。」
コーヒーが出てくる短篇に、『青のある断層』があります。
松本清張の小説。

「銀座へ出たら、いつものぞく、小さいがうまいコーヒーを飲ませるうちに行ったが、」

これは若い画家の様子として。
若い画家、畠中良夫は、何を着ているのか。

「粗いチェックのジャンパーにコールテンのズボンをはいている。」

「コールテン」は、日本語。英語なら、「コオデュロイ」。
ここでの「コール」は「筋」のこと。「テン」は、「ビロウド」の意味。
つまり、「筋あるビロウド」を指しての言い方だったのですね。
どなたか白のコールテンで上着を仕立てて頂けませんでしょうか。