本と肘当て

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本にもいろんな種類があるんでしょうね。たとえば、限定本。たとえば、豪華本。
1963年、NYで出版された豪華本に、『ポオ推理小説集』が。ここでの「ポオ」が、ミステリ生みの親、エドガー・アラン・ポオであるのは、いうまでもないでしょう。
この『ポオ推理小説集』をさらに美しい仕上げたのが、ケルスティン・ティニ・ミウラ。ケルスティン・ティニ・ミウラは、ひと言で言って、装幀家。それも世界的に有名な装幀家。日本人の三浦永年と結婚したので、ケルスティン・ティニ・ミウラなんですね。
1968年。川端康成の、ノーベル文学賞受賞。この時の表彰状をデザインしたのも、ケルスティン・ティニ・ミウラ。
そのケルスティン・ティニ・ミウラが、『ポオ推理小説集』に、特別の装幀を。表紙は、ブルー・グリーンのモロッコ革。裏表紙には、メキシコ貝を使っての、象嵌。小口は、白金。それはそれは、絢爛たる一冊でありました。1967年に。約一年をかけて完成したという。ほとんど値段がつけられない貴重品でしょうね。
豪華本の一方、実用本位の古本もあって。
サンフランシスコに、「ハーヴァード・ブック・ストア」が。今は堂々たる書店ですが、もともとは古本屋としてはじまったんだそうですね。1932年、マーク・S・クレイマーによって。
マーク・S・クレイマーが考えたのは、近くにあるハーヴァード大学の教科書。もう使い終わった教科書を安く仕入れて、それを古本として売る方法。これが人気になって。今でも、ハーヴァード・ブック・ストアの地下は古本コーナーになっているのは、そのためなんでしょう。ハーヴァード・ブック・ストアが出てくるミステリに、『別れの瞳』が。ジェレマイア・ヒーリイが、1992年に発表した物語。

「昼食をとろうと、私はハーヴァード書店のカフェに向かった。」

「私」とは物語の主人公で、探偵の、ジョン・フランシス・カディのこと。ハーヴァード・ブック・ストアの上はカフェになっていて、ここで食事をするのは、ちょっとおしゃれなことなんだとか。また、こんな描写も。

「肘あてのついたセーター、折り目入ったウールのズボン、ピカピカに磨かれたローファー。」

これは、トミー・ダヌッチという人物の、自宅での着こなし。たぶんこれは、エルボー・パッチのことなんでしょう。
肘当てのあるスェーターで。新しい本を探しに行くとしましょうか。

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