サントリーは洋酒の会社ですよね。
サントリーには「オールド」という銘柄があって。まあ、そんな説明は不要でしょう。その「オールド」についての話。
「当方、六十八歳。近頃とみに酒量が減ってきたように思えてなりません。夕べもサントリーのオールド一瓶で酔ってしまったんです。」
これは柴田錬三郎著『わが盃の酒飲み作法』に出てくる質問。質問というより自慢のようでもありますが。
『わが盃の酒飲み作法』の巻末には、読者の質問に柴田錬三郎が答える欄があって。これに対して柴田錬三郎、「無言」と答えています。
『わが盃の酒飲み作法』は、「洋酒マメ天国」の中の一冊なんですね。この題からも想像できるように、すべて「豆本」になっている。昭和四十二年に、サントリーは粋なことをやったものです。
粋といえば、『洋酒天国』という広報誌も、粋でしたね。歴史の遺る名物であります。『洋酒天国』の名付け親は、佐治敬三そのひと。創刊は、昭和三十一年。一企業の広報誌ながら、一時期は22万部の部数を誇ったものです。だって、面白かったもの。編集長は、開高健。その後、山口 瞳なども参加して。
山口 瞳はどんなウイスキーを飲んだのか。
「家では、国産ウイスキー特級の一番安いもの( 通常角瓶と称せられる ) または一級の一番高価なもの ( 白札と称せられる ) を飲む。国産でもそのうえに三階級あるが、それは決して飲まない。」
山口 瞳著『ポケットの穴』には、そんなふうに書いています。どうも山口 瞳は「オールド」などは自分には高級すぎる、と思っていたみたいですね。
ウイスキーが出てくるミステリに、『バーテンダーの死』が。デニス・リングの物語。
「一口アイリッシュ・ウイスキーを飲むと、再び電話のダイアルを回した。」
これは探偵の、ケリーの様子なんですね。また、こんな描写も。
「物音のぬしは男。趣味のよいカシミアのオーバーコートを身につけた長身の人品卑しからぬ男だった。」
これはケリーの事務所にやってきた、トーマスという人物の着こなし。
さて。カシミアのコートで、サントリー・ウイスキーを飲みに行くとしましょうか。