月を眺めると、心が洗われますよね。
まして、満月は。さらに、名月は。
月も雲間のなきは嫌にて候
これは村田珠光の言葉なんだとか。茶道の高い心をあらわしているんだそうです。
そうかと思うと、あんまり月がきれいなので。
名月を 取ってくれろと 泣く子かな
小林一茶はそんなふうに詠んでいます。
でも、月はそんなに簡単には取れないので、写真に写すこともあるでしょう。
「空に月のあることを忘れて暮らしている。」
随筆家、増田れい子は『月夜』と題して、そんなふうに書きはじめています。この文章には、満月の写真が一葉、添えられて。東京タワーの肩あたりに浮かんだ黄金色の月を捉えています。これは、以前、花森安治が写した一枚なんだそうです。
増田れい子著『インク壺』には、『ボタン』の随筆も収められています。
「穴にいったん糸を通し、布に固定したらそこで一ぺん、ボタンを一八〇 度ひねる。そこから本格的に糸をかけて行く。安定度が違ってくる。」
これは横浜の、小沢健次郎という職人の、ボタンのつけ方。小沢さんはこのボタンつけをするとき、「落ちるなよ、落ちるなよ……」と、念じながら針を遣うんだそうです。
さて、しっかりボタンの付いた服で。月を「取りに」行きましょうか。