煙とダブル

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煙が目にしみる。たしかそんな歌がありましたよね。『スモーク・ゲット・イン・ユア・アイズ』。この場合は、心が燃える時の、煙なんですが。
煙と香水も、関係があって。古代の香水は煙だったので。香木を炊くことで、佳い薫りを得たわけですね。それで、「パーフューム」perfume 。「煙を通して」の言葉が、生まれたわけです。フランスでの、「パルファン」 parfun も同じところから出ています。
香水もまた、星の数ほどあるようですが。たとえば、「夜間飛行」。「ヴォル・ド・ニュイ」。1933年にゲランが発表した名香ですね。
もちろん、サン=テグジュペリの小説の題から出ています。サン=テグジュペリ自身は最初、『重い夜』の題を考えていた。これに対して、『夜間飛行』を提案したのが、コンスエロだったのです。後に、サン=テグジュペリの奥さんとなる女性。
『夜間飛行』は、1931年の4月に、出版。サン=テグジュペリはこの少し前に、コンスエロと結婚しています。『夜間飛行』は同じ年の12月に、フェミナ賞を受けています。サン=テグジュペリ、三十一歳の時に。
サン=テグジュペリはとても飛行機が、好きで。ほんとうは年齢制限が過ぎているのに、操縦桿を、握った。涙ぐましいほどの、あの手このを使って。『夜間飛行』は、結局、人間愛を描いた小説だったのです。
サン=テグジュペリが飛行機ともうひとつ、お好きだったのが、ダブル前のスーツ。今も、サン=テグジュペリの写真はたくさん遺されています。でも、シングル前のスーツは、少ない。
たとえば。1930年代の、巴里。サンラザール駅で写された一葉を見ても、ダブル前のスーツを着ています。
ダブル前はシングル前に較べて、ちょっと肩の力を抜いた味わいのスタイルです。もしシングルが楷書だとすれば、行書の魅力なのです。
まるで煙のように軽いダブルのスーツを着てみたいものですが。

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