グロッキーって、言いますよね。たとえばボクシングなんかで、ふらふらになった時に、「グロッキー」と。
グロッキーは、和製英語。正しくは、「グロッギー」 groggy なんだそうですね。グロッギーから「グロッキー」の表現が生まれたのでしょう。で、もともとは「酒に酔って」ふらふらの意味だったとか。
昔むかしの英国の船員は、たいていラムを飲んだ。水代わりに。水を貴重品、そう簡単には飲めなかったから。船にはラムの大樽が積んであって。そこから勝手に飲む。飲みすぎると、酔う。酔うと、仕事にならない。
それで、1740年頃に。生のラムではなく、水で割って飲むことが勧められて。ところが水割りのラムは飲みやすくて。いつもより飲む量がふえた。当然、酔っぱらいがふえた。で、水割りラムによる酔っぱらいを、「グロッギー」と呼ぶようになったそうですね。
水割りラムを提案したのが、エドワード・ヴァーノン提督。このエドワード・ヴァーノン提督のあだ名が、「グロッグ」。いつでも、グログランのコートを着ていたからです。このグロッグというあだ名から、「グロッギー」の言葉が生まれたという。
グロッグが出てくるミステリに、『街中の男』があります。もちろん、ジョルジュ・シムノン作。
「メグレは風邪を治すため、グロッグを飲みはじめた。」
そしてまた、ここにはコートの話も。
「オーバーはイタリアン大通りの《 オールド・イングランド》 店のもので、既製品である。」
これは、ステファン・ストレヴィッキという人物のコート。
「灰色オーバーに、仕立ての良いスーツを着て、柔らかなフェルト帽をかぶっている。」
ステファンはおそらく洒落者なのでしょう。「オールド・イングランド」は、パリの名店。英国調のスタイルがお得意。
グロッグを飲むも良し。オールド・イングランドの外套を羽織るも良し。