デザートとディナー・ジャケット

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デザートにはつい誘惑されてしまますよね。その昔、『美味礼讃』の著者、ブリア・サヴァランは言いました。
「フロマージュの出ない食事は、片目のない美人である」と。もし、この言葉を借りるなら、こうも言えるでしょうか。
「デセールのない食事は、片目のない美人である」と。「デザート」の習慣自体は、昔の英国の食事と関係があるんだそうですね。故き佳き時代の英国では、食事が終わると、食卓の上を片づけた。片づけた後に、食後の菓子を出した。この風習がフランスに伝えられて、「デセルヴィール」 desservir と呼ばれるように。「皿を下げる」の意味。これが短くなって、「デセール」。「デセール」がふたたび英国に戻って、「デザート」になったんだそうですね。
デザートの王様はなんと言っても、「ピエス・モンテ」。大きなお城のように「建築」する菓子のこと。たとえばウエディング・ケーキもまた、「ピエス・モンテ」の一種でしょう。ピエス・モンテは十七世紀のフランスにはじまるというから、古い。この巨大なピエス・モンテを得意としたのが、カレーム。今なおケーキの神様と歌われるアントナン・カレーム。アントナン・カレームの作るクロカンブーシェは、宝物であったという。アントナン・カレームは訳あって、まだ小さい少年の頃から、まったくの独学でケーキ作りをはじめて、後に王侯貴族に寵愛されるまでになっています。
アントナン・カレームは、今、「オー・ボン・マルシェ」のある場所で、1783年6
月8日に生まれたと、考えられています。今日のプティ・フールを一般化させたのも、カレームであったとも。とにかくデザートを語る時には忘れてならない人物であります。
マロン・シャンティーが出てくる小説に、『女神』があります。三島由紀夫が、昭和三十年に発表した物語。私は『女神』を、ファッション小説として読んだひとりでありますが。

「周伍と朝子の食卓には、デザートのマロン・シャンティーが運ばれてゐた。」

また、こんな描写も。

「殿下は恰幅のいい体にぴったりとディナー・ジャケットを召され………。

もと華族の出なので、「殿下」。恰幅はよくありませんが、ぴったりとフィットしたディナー・ジャケットは着たいものですね。

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