ジョイスとジビュス

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ジョイスで、作家でといえば、ジエイムズ・ジョイスでしょうね。「二十世紀最大の言葉の魔術師」という形容があります。これが決しておおげさでないのが、ジエイムズ・ジョイスの正体なのです。少なくとも、二十世紀、英国文学の最高峰であることは、間違いありません。
では、二十世紀フランス文学の最高峰は、誰か。プルースト。マルセル・プルーストを誰しも挙げるでしょう。
マルセル・プルーストと、ジエイムズ・ジョイス。このふたりは1922年の巴里で出会っているんですね。
1922年5月18日。巴里のオペラ座で、『狐』の公演があって。ストラヴィンスキーの、『狐』。この公演の後、リッツ・ホテルでの宴があって。この宴の発起人は、シフ夫妻。シフ夫妻は英国出身で、巴里にも住んだ、富豪。そしてまた芸術家の後援者でもあった人物。
1922年の宴には、ストラヴィンスキーはもちろん、ディアギレフ、ピカソ、ジョイス、そしてプルーストが招かれていたのです。
プルーストとジョイス。ただ出会っただけでなく、帰りのタクシーに同乗もしているのです。帰りのタクシーの中でのふたりの会話は、おたがいの病のことだったという。ジョイスは目の病について語り、プルーストは胃の病についてこぼしたんだとか。
マルセル・プルーストといえばもちろん、『失われた時を求めて』ですね。この中に。

「ブレオーテ氏の片メガネは、パールグレーの手袋や、「ジビュス」という折りたたみ式シルクハットや、白いネクタイに加えて…………」。

ジビュス gibus は、オペラ・ハットのこと。1810年頃。巴里の、アントワーヌ・ジビュスが考案したので、その名前があります。

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