刺繍とシュー・トゥリー

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

刺繍は、精密な縫取りのことですよね。英語では、エンブロイダリー embroidery。
刺繍の歴史もずいぶんと古いんだとか。古代エジプト時代にも、すでにビーズを使っての刺繍があったらしい。
あるいはまた、古代ローマにも「オプス・フリジウム」があった。そのままに訳しますと、「フリジア人の技法」。つまり古代ローマの人は、刺繍はフリジア人が発明したと、考えていたのでしょう。
日本でも時に紋を縫いであしらうことがあります。「縫紋」。古い時代には一種のおまじないでもあったらしい。ごく簡単に言って、「魔除け」。縫いが多いところからは悪魔が入っては来れないから。そんな考えもあったようですね。
刺繍が出てくるミステリに、『悪魔と警視庁』があります。E・C・R・ラロックが。1938年に発表した物語。

「高級な絹地に指を触れ、美しい縫い目や刺繍に目を凝らしながら………………」。

これは、ルイ・ド・ラルジェという専門家が生地を見聞している場面。場所はもちろん倫敦。『悪魔と警視庁』には、こんな描写も出てきます。

「ハイズ自身の靴はすべて ー もともと木型を入れてかたちを整えてあったが………………」。

レイモンド・ハイズは、英国の作家という設定。ここでの「木型」は、シュー・トゥリーのことでしょう。
洒落者の靴は必ず、木型の入れて、収納することになっています。いつも木型に入れておけば、爪先まできっかり一直線にのびてくれるものです。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone