アイルランドと麻服

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アイルランドで、作家でといえば、ジョイスでしょうか。ジェイムズ・ジョイス。ジェイムズ・ジョイスは、1882年2月2日、アイルランドのダブリンに生まれています。
ジェイムズ・ジョイスは、フランスのプルーストと並んで、二十世紀最高の作家だと信じられています。ジョイスは、多くの傑作を遺しています。『ダブリン市民』、『若き芸術家の肖像』、『フィネガンズ・ウェイク』などの。でも、あえてひとつだけというなら、『ユリシーズ』でしょうね。
ジョイスの代表作といって良い『ユリシーズ』は、巴里で出版されています。なぜ、巴里なのか。シルヴィア・ビーチによって出発されたので。
1920年頃、巴里のとあるパーティで、シルヴィア・ビーチは、ジョイスを見かける。その時のジョイスはテニス・シューズを履いていたという。ビーチはジョイスにこう話かけた。

「あの偉大なるジョイス様ですか?」

ビーチは「シェイクスピア・アンド・カンパニー」の名刺を出し、ジョイスは明るい所へ名刺を持って行って、やっと「シェイクスピア」の文字を読んで、喜んだ。
その後、ビーチはジョイスに、『ユリシーズ』の出版を持ちかけた。大手の出版社は『ユリシーズ』を理解できなかったので。
「純利益の66%をジョイスに………」というのが、ビーチの条件だったそうですね。ビーチは印刷については、フランス、ディジョンの、「ダランティエール」を考えていた。ジョイスは装幀にコバルト・ブルーを使ってもらいたい、と。
ディジョンの、モオリス・ダランティエールは、ジョイスの言うコバルト・ブルーがよく映える紙を探してドイツやオランダをかけめぐったという。

「青いエーゲ海に浮かぶ白い島」。

それがジョイスの表紙に対する希望だったらしい。
アイルランドと小説で、思い出すものに、『アイルランドにきて踊れ』がありません。シャーリイ・ジャクスンが、1949年に発表した物語。これは古い流行歌『アイルランドにきて踊れ』を下敷きにした短篇。シャーリイ・ジャクスンは奇妙な味わいの小説を得意とする作家。同じ頃に、『麻服の午後』をも書いています。

「ハワードは、ブルーのリネンのシャツと半ズボン。」

これはある日の、初夏の午後。部屋にいるすべての人が麻服を着ている場面なのです。
いいなあ、「ブルーのリネンのシャツ」。
でも、「エーゲ海の………」などとは申しませんが。

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