ロシアもまた、憧れの国ですよね。第一、キャヴィアが食べ放題という印象があるではありませんか。それにロシアの冬なら堂々と毛皮のコートが着られるでしょうし。ロシア紅茶を何杯飲んでも気障にはならないし。
戦後、わりあいはやくロシアを旅した作家に、五木寛之がいます。五木寛之は1965年6月10日に、横浜を船で発っています。その時の日記は、『遥かなるロシア』に収められています。
船の名前は「バイカル号」で、五千数百トンであったらしい。6月10日、定刻の正午に、出港。五木寛之の船室は、303号室であったらしい。
「バイカル号」での食事は、一日四回。朝食があって、昼食があって、夕食があって。その間の4時30分に、軽食が出るので。
「十二時半に昼食。キャビアのザクスカ、野菜サラダ、ぼるしち・スープ、ピロシキに水と黒パン、でざはリンゴのシロップ漬け。」
『遥かなるロシア』には、そのように出ています。五木寛之は昼食後、船内のバアに。バアに行ってビールを飲む。アサヒスタイ二ーが、80円。ワインが一杯、140円。小さなチョコレートが、25円。
これまた、貴重な資料でしょうね。「バイカル号」の船室は一等、二等、三等の別があって。でも、食べる場所こそ違え、食事の内容は同じだったとも、書いています。
故い時代のロシアが出てくるミステリに、『極限捜査』があります。オレン・スタインハウワーが、2004年に発表した物語。この中に。
「 「石鹸だよ」彼はこたえた。「西側世界のデオドラント・ソープであらった、すべすべの肌のにおいだ」 」
「西側世界の石鹸」。ここから勝手に想像するものに、「ロジェ・ギャレー」があります。フランスの、有名な香料会社。Roger & Gallet 。たぶん、ほんとうは「ロジェエ・エ・ギャレエ」なのかも知れませんが。
天然の香料を使っているので、美しい薫りがたちのぼります。ロジェ・ギャレーの石鹸で顔を洗ってから、ロシアへ行く夢でも見るといたしましょうか。