由比ヶ浜と浴衣

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由比ヶ浜は、鎌倉にある地名ですよね。鎌倉といえば八幡宮で、八幡宮を背にまっすぐ海に向って進む。で、突き当たった所が、由比ヶ浜。由比ヶ浜は遠浅の海で、弧を描いた砂浜が美しい。
今は、由比ヶ浜ですが。むかしは「由井」とも「湯井」とも書いたらしい。由比ヶ浜がどうして由比ヶ浜なのか、よく分かってはいないそうですが。一説に、「結」から由比ヶ浜が出たのではないかとも言われています。ここは古くからの漁場で、漁業権を守るための組合があって。その組合を「結」。こうして後に「由比ヶ浜」と呼ばれるようになったとか。
由比ヶ浜が出てくる随筆に、『鎌倉の夏』があります。鏑木清方が、昭和二十三年に発表した名文。

「去年は由比ヶ濱の滑川いせいが使へなかつたので材木座が割に賑はつた………………」。

鏑木清方は、晩年を鎌倉に住んだのでお詳しいのでしょう。鏑木清方はもちろん美人画の大家で、当然、浴衣にもお詳しい。

「浴衣は本來湯から上がつて常のものを着るまでの間に肌着なしにはおつたもので………………」。

清方は『ゆかた』と題する随筆を、そのように書きはじめています。清方にはもうひとつ『ゆかた』の随筆があって。ここでは「ゆかたの贅沢」について書いています。「ゆかたの贅沢」。それは一日に何度か新しい浴衣に着替えること。でも。

「割に氣が小さいので、贅澤の沙汰に過ぎはしないかといふ氣がして………………」。

浴衣は水にくぐらせる前の一瞬の、一期一会の美と言われます。が、清方はそのさらに上をいこうとしたのでしょうね。
そこまで凝ろうとは思いませんが。一度、好みの浴衣で、由比ヶ浜を散歩してみたいものではありますが。

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