アンギーユという言い方があるんだそうですね。ang u ill e 。フランスで、鰻のことなんだとか。これはラテン語の「アングイラ」と関係があるらしい。もちろん、古代ローマの時代にも、鰻料理があったのでしょう。
むかし、銀座に「鰻パン」というのがあったんだそうですね。玉川一郎著『たべもの世相史・東京』という本に出ています。「鰻パン」は、昭和十五年のこと。銀座の「松屋デパート」で売り出して、大人気。
「これは結構、とばかり、客は殺到したネ。一人で何人前も買っていく客ばかりで、たちまち売切れ。」
と、出ています。次の日からは、鰻パンはひとりひとつの制限なったほど。では、鰻パンはどんな代物だったのか。鰻の蒲焼をパンで挟んで、それを油で揚げたものだったという。
もう少し前。昭和八年頃。やはり銀座に、「モーリーの鰻」というのがあって。「モーリー」はもともとは、パン屋。そのパン屋の「モーリー」が、鰻を出すようになって。この「モーリーの鰻」がなんと、十銭。昭和八年の十銭は、今の千円くらいでしょうか。当時、銀座で「モーリーの鰻」を知らない者はいないくらいに流行ったんだそうですね。
1890年頃の倫敦では、鰻をどんな風にして食べたのか。鰻のゼリー寄せ。
「 「ウナギのゼリー寄せをひと皿たのむ。それから、友達にもひと皿……………………。」
これは警官ふたりがビールを飲む場面。そのビールのお相手に、「ウナギのゼリー寄せ」を。警官はブラッグとモートンのコンビ。ブラッグに言わせますと、「ウナギのゼリー寄せほど美味いものはない」んだとか。
ところで若い警官、モートンは実は富豪の息子という設定になったいます。ジェイムズ・モートンはどんなコートを着ているのか。
「二つの小箱をアルスター外套のポケットにいれ、オテル・ド・パリへと足を向ける。」
モートンは捜査のために、モナコへ。モナコで恋人にロケットを買う場面。つまりモートンは、アルスター・コートを着ているわけです。
ああ、アルスター・コートを着て。美味い鰻を食べに行きたいものですが………………。