ホットドッグは、美味しいものですよね。第一、簡便でよろしい。パンとソーセージと少しはキャベツなどもいっしょに食べられる点で。
ホットドッグがお好きだったのが、古川ロッパ。
「帰りに千成へ寄りすしをつまみ、屋台のホットドッグを食って帰る。」
昭和十三年十六日、日曜日の『ロッパ食日記』には、そのように出ています。すしの後、というのですから、お嫌いではなかったのでしょう。
この古川ロッパについては、徳川夢声がこんなふうに書いています。
昭和七年八月八日。この日、徳川夢声はNHKのラジオ放送で、『西遊記』の朗読番組が。昭和七年ですからもちろん、生の朗読。
ところが夢声、前の晩にいささかきこしめして、朝、起きられない。朗読なんぞ、とんでもない。で、どうしたのか。古川ロッパが、代読。すっかり徳川夢声になりすまして。
徳川夢声の奥さんでさえ、てっきりご本人の声だと思った。
徳川夢声著『いろは交遊録』に出ていますから、ほんとうなんでしょう。
「ココア拾銭、コーヒ五銭、ホットドックなど買いた紙が貼つてある。」
永井荷風著『おもかげ』の一節。荷風もまた、ホットドッグを召し上がったのでしょうか。
河野多恵子は、『回転扉』の中で、「ホット・ドッグ」と書いているのですが。河野多恵子が、昭和三十七年に発表した『幼児狩り』の中に。
「赤と紺との横縞の色の深さや、同じ図柄の、柔かそうに折かえっている小さな衿の感じに……………………。」
と書いてあります。ここでの「横縞」は、ホリゾンタル・ストライプのことでしょうか。
ホリゾンタル・ストライプのシャツで、ホットドッグを食べに行くくらいは、お安いご用ですが。