ドーランとトロピカル

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ドーランは、芝居によく使う化粧品ですよね。歌舞伎の女形は手にも白いドーランを塗るんだとか。
1936年に、ジャン・コクトオが日本に。歌舞伎を鑑賞。この時、六代目尾上菊五郎に会って。新聞社の記者は写真におさめようと、「どうぞ、握手を」
。コクトオはドーランを汚さないように、握手の振りを巧みに。その後で、菊五郎はコクトオのことをこう言った。
「あいつは、豪えやつだ………」と。
ドーランが出てくる小説に、『魔に憑かれて』があります。北原武夫が、1957年に発表した短篇。

「モンコときたらそんなことを言って、怒ったような顔つきで、ドーランを塗っている。」

これは演劇が舞台ですから、当然のことでしょう。
1939年。北原武夫は、宇野千代と結婚。この時の仲人役が、藤田嗣治。北原武夫と宇野千代は、1936年に『スタイル』を創刊。この『スタイル』の中に、「男子専科」というページがあって、人気に。これが後に独立して、『男子専科』となったものです。
ドーランの出てくる小説に、『東京の人』が。川端康成が、昭和三十年に発表した物語。

「髪を色粉で染めて、つけ鼻に、ドーラン化粧、外國の風俗の衣裳をつけた、男女優に見守られて………………」

『東京の人』には、こんな描写も。

「夏服はイギリス製のトロピカルで、仕立ても一流だから、形がくづれてゐない。」

うーん。川端康成はさすが、洋服に一家言あったみたいですね。
私もトロピカルのスーツを着ることはあるでしょう。でも、ドーランを塗ることはまずないでしょうね。

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