ソワとソーラートーピー

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ソワは、絹のことですよね。s o i e と書いて「ソワ」と訓みます。英語の「シルク」s ilk と同じです。
日本語の「絹」は「きぬ」とも「けん」とも訓むこと、申すまでもありません。ただ「絹布」と書いたなら、たいていは「けんぷ」と訓むことが多いようですね。
絹と絹とがふれあう音を、「きぬづれ」。でも、この場合は「衣擦れ」と書きます。衣擦れの音、これまた男心をくすぐるものであります。フランス語にもうまい表現があって、「フル・フル」。
絹は麻と違って、動物性繊維。蚕の吐く糸から精錬されるので、動物性繊維。蚕の糸は貴重品なので、昔の日本人は必ず「お蚕」と呼んだものであります。
蚕は世界中にありますが、ことに日本の蚕は小型で、より細い絹糸を生んだものです。戦前にはヨオロッパをはじめ輸出品目とされたのは、ご存じの通り。
絹地にも星の数ほどの種類があります。中でも男心を酔わせのが、縮緬。シルク・クレエプであります。

「物がくしのひぢりめんも、裾壱尺あまりまくれて、粂仙も死ぬる程……………………。」

『好色二代男』には、そのように出ています。
文中の「物がくし」は、腰巻のこと。また「ひぢりめん」が、緋縮緬であるのは、いうまでもないでしょう。つまり、緋縮緬の腰巻に、粂の仙人さながらに、心揺れているのでしょう。
でも、縮緬はなにも腰巻ばかりでもありません。つい最近まで、縮緬はよく風呂敷に用いられたものです。

「船越トミ子は、チリメンの風呂敷を解いて、季節に早いメロンやら、葡萄やらの堆高い果物籠を………………………」。

獅子文六著『青春怪談』にも、そのように出ています。獅子文六の本名は、岩田豊雄で、実家は横濱の「岩田商会」。おもに絹物を外国人に商っていたところ。絹にはお詳しいはずです。
また、『青春怪談』には、こんな描写も。

「白麻のセビロに、古い型のヘルメット帽というイデタチで………………」。

これは、奥村鉄也という人物の着こなし。私の勝手な想像ですが、「ヘルメット帽」は、ソーラートーピーではないでしょうか。防暑帽。
内側に断熱材として、「ソーラー」が入っているので、ソーラートーピー。ソーラーは、豆科の植物。その中の髄のことを、「ソーラー」
s o l ar 。
時にはソーラートーピーで、絹の似合う女の人を探しに行くとしましょうか。

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