バターは、乳製品ですよね。乳から、バターが生まれます。
バターの他、チーズも、ホエーも。ホエーは無理矢理日本で近いものを探せば、湯葉でしょうか。
バターはまったくおしゃれと無関係ではありません。
もし、バターがひょいと飛びますと。「バタフライ」b utt erfly 。蝶ネクタイのことですから、おしゃれと大いに関係ありということになってきます。フランスでも同じくパピヨンというではありませんか。
ある時、エスコフィエに、「フランス料理とは何ですか?」と質問した人がいたらしい。それに対するエスコフィエの答えは、実に単純でありました。
「バター、バター、バターしかない」
もちろんオオギュスト・エスコフィエはフランス人でありましたから、日本語で言ったわけではありません。
「セ・デュ・ブール、デュ・ブール、エ・アンコール・デュ・ブール」
正確にはこのようにおっしゃったんだそうですね。もしこれを日本語に置き換えますと。
「一にバター、二にバター、三四がなくて、五にバター」。
そんな感じでもあったでしょうか。
日本では玉子焼きの時に、胡麻油を敷いたりも。これがフランスならバター。あるいはまた、「溶かしバター」。
玉子焼きはさておき、フランス料理に溶かしバターはよく使われるようです。フランス料理の味の秘密は、溶かしバターにあるのではないかと、想えてくるほどに。
1996年に、イギリスの、ジョン・ランチェスターが書いた『最後の晩餐の作り方』にも、バターの話が出てきます。
ジョン・ランチェスターはれっきとした英国人なのですが、フランス大好きという変人。
フランス人が好きで、フランス料理はもっと大好きというお方であります。
「強火でバターを溶かし、泡が消えるのを待つ。火を弱めず、真ん中が固まりかけたとこで具を入れる。」
ジョン・ランチェスターはオムレツの美味しい作り方を、このように説明しています。
では、ジョン・ランチェスターは美味しいものを食べに行く時、どんな恰好であるのか。
「………これに黄色の水玉模様の入った地は水色の蝶ネクタイを結び……………………。」
と、はじまって延々と服装について語っています。しかし私がなんとも羨ましく思うのは、次の件。
「………履いていたのは見事なまでに保守的な手縫いの茶色いブローグです。」
ジョン・ランチェスターは、手縫いの、ハンド・ソウンの靴を履いているわけであります。
もし、ハンド・ソウンということなら、「サドル・ステッチ」が採用されているはず。
サドル・ステッチは読んで字のごとく、馬の背の鞍を縫った手法。二本の麻糸で、左右からかしめるよに、縫う。もっとも頑丈な縫い方になるのです。
ハンド・ソウンの靴は、十年履いても、びくともしません。
どなたか黒の、ハンド・ソウンのブローグを作って頂けませんでしょうか。