富岡とトゥリルビイ

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富岡は、地名ですよね。富岡は、日本全国至る所にあるでしょう。
でも、「富岡市」となりますと、群馬県にあります。ここはむかし、
「富岡製糸場」があった所なのです。富岡製糸場は、明治五年十月四日にはじまっています。国営製糸場として。
まず、フランス人技師の、ポオル・ブリューナの指導を受けて、煉瓦造の工場を完成させています。
初代の工場長は、尾高惇忠。富岡製糸場は、はじめ女工がなかなか集まらなくて。当時、十三歳だった、尾高惇忠の娘、勇が第一号に。
余談ではありますが。作曲家の、尾高惇忠は、尾高工場長の孫。
明治はじめの富岡製糸場は、世界でも優れた絹糸、質量ともに最高峰だったのです。
富岡はまた、人の名前でもあります。たとえば、富岡周蔵。富岡周蔵は、日本でのハム造りの先駆者です。
日本最初のハムは、明治七年にはじまっています。英國人、ウイリアム・カーティスが、当時の鎌倉郡柏尾村で、牧畜を。
でも、カーティスは秘密主義で、日本人の立ち入りを禁止。ところが、ある時、ハム工場が火事に。この時、村人が消化に協力。ために、カーティスはこの村人には、ハム造りを伝えたという。
その中のひとりが、富岡周蔵。今も大船にある「大船軒」の創業者でもあります。大船軒は、明治三十二年に、「サンドイッチ弁当」を販売。これは駅弁としては最初の「サンドイッチ」だったのですね。
サンドウイッチが出てくるミステリに、『単独捜査』があります。
1992年に、ピーター・ラヴゼイが発表した物語。

「ランチはサンドイッチだけで我慢したと、ステフに報告できるぞ。」

これは物語の主人公、ピーター・ダイアモンドのひとり言。少し説明が必要でしょう。ピーター・ダイアモンドはイギリスの、元警視という設定。そのピーター・ダイアモンドが捜査のために、ニュウヨークへ。ピーター・ダイアモンドはニュウヨークでのランチに、サンドウイッチを。で、そんな言葉を呟いたのです。
イギリスのサンドウイッチは、うんと小型。アメリカのサンドウイッチは、うんと大型。イギリスでのサンドウイッチは、ごく軽いお摘み。アメリカでは充分、食事代りに。
「ランチはサンドウイッチだったよ。」
と、奥さんの、ステファニーにいえば、同情してもらえるとだろう、と。
『単独捜査』には、こんな描写が出てきます。

「見ただけではわからんでしょう。茶色のトリルビーをかぶってますから。」

これも、ニュウヨークでの、会話。
「トゥリルビイ」 tr ilby は、美しいカーヴを特徴とする、ソフト・ハットのこと。ふつう、イギリスでは「トゥリルビイ」。一方、アメリカでは、多く「フェドーラ」 f ed ora 。
フェドーラも、トゥリルビイも、もともとは芝居での女優主人公の名前から出ています。これもまた、お国が違えば名前が変わる一例なのでしょうか。
トゥリルビイをかぶって、ハム・サンドウイッチを食べに行きたいものですね。

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