ブリムとフェルト

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ブリムは、縁のことですよね。br im と書いて、「ブリム」と訓みます。
居酒屋なんかに行きますと。酒をなみなみと注いでくれることが。まあ、あれもおまけなんでしょうね。
なみなみどころか、溢れさせてもくれる。呑兵衛にとっては感きわまる一瞬でありましょう。もっとも、あらかじめ受皿が用意されていて。溢れた酒も無駄になることはありません。
呑兵衛は呵々大笑したいのをこらえて、静かに受皿のほうから口をつける。それというのも、場合によっては、受皿に、溢れた酒の量のほうが多かったりするものですから。
なみなみの、表面張力を、どう飲むのか。これにも流儀があるみたいで。
まず、杯の、「表面張力部分」から、飲む。少しでもこぼしたくないという、呑兵衛心理であります。けれども、溢れても、結局は受皿に入るだけのことなのですが。
「表面張力部分」には、呑兵衛の口が先にでる。この口が先に出る仕種が下品でなければ、そうとうの紳士だと考えて良いでしょう。
グラスになみなみとなにかを、注ぐ。そんな時にも「ブリム」の言葉を使うことがあるんだそうですね。
むかしのアメリカも俗語での「ブリム」は、「帽子」そのものを指してという。まあ、それほどにブリムと、ハットは切っても切れない関係にあるのでしょうね。
帽子の「端」のことを、ブリムといいます。端ではない中央部分を、「クラウン」 cr own 。「王冠」という時の「クラウン」と同じ綴りになっています。つまり、ハットはクラウンとブリムとから、本体は成り立っているのです。
帽子のブリムは、大きく分けて、上げておくのか、下げておくのか。上げておくのを、「オフ・ザ・フェイス」。下げておくのを、「スナップ・ブリム」。
余談ですが、ブリム全体を下げたかぶり方を、「クローシュ・スタイル」と呼ぶのですが。
ブリムが出てくるミステリに、『十三丁目の家』があります。S・S・ラファティ が書いた短篇。

「フィンリーの手から、ひったくるように帽子を取り、そのブリムを上着の袖口で丁寧になでた。」

フィンリーは、警部という設定。ある洋品店で帽子を触っていた時の様子。
あだしごとですが。帽子屋で嫌われる最上の方法は。棚に並んでいる帽子を、ひとつづつ、指先で摘んでみることです。たちまち店員の顔が暗くなってきます。
『十三丁目の家』の中に、こんな描写があります。

「帽子の材料のフェルトは、ウサギの柔らかい下毛を蒸して作るのです。」

これは、フィップス医師の科白。もちろん、フィンリー警部に対しての。
フェルトにも、大きく分けて二種あって。ウール・フェルトと、ファー・フェルト。ウサギの毛を使うのは、ファー・フェルトで、上等品。お安くはありません。でも、クラウンもブリムも、着用者の好みによって、どんな形でも安定してくれるのです。
なんだか上質のソフト帽をかぶって、居酒屋に行きたくなってきましたね。

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