戀と香水

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戀は、ラヴのことですよね。
今はふつう、恋と書きます。もちろん新字と旧字の違いであります。でも、「戀」の文字をよく眺めていますと。
「いとしいいとしいという心」。そんなふうにも見えてきます。つまり恋より戀のほうが覚えやすいのではでしょうか。

「恋愛ははしかの如きものだ。我われは皆それを通りすぎねばならない。」

イギリスの作家、ジェローム・K・ジェロームは、『無用人の無用の考え』で、そのように言っております。
ジェローム・K・ジェロームは、本名。名前と名字が同じという珍しい人物です。余談ではありますが、ミドル・ネイムの「K」は「クラップ」なんだそうです。
ジェローム・K・ジェロームの代表作は、『ボートの三人男』。1889年の発表。たちますベスト・セラーに。読みはじめると、笑いがとまらなくなってしまうユウモア小説です。
と同時に、『ボートの三人男』は、1880年代の英国のブレイザー がどうであったかの、貴重な記録にもなっています。
少なくともブレイザー を語るには、『ボートの三人男』に目を通しておきたいものです。
『ボートの三人男』は、当時の流行だったテムズ川でのボート遊びを愉しむ内容になっています。
ジェローム・K・ジェロームは最初、純粋にテムズ川の案内書を作るつもりが、いつの間にか、小説になってしまっていたんだそうです。
いずれにしても、ざっと130年ほど愛読されているユウモア小説は、お美事であります。

恋愛で有名なのが、『恋愛論』。1822年に、スタンダールが発表した随想録。恋愛とは何かについて、こと細く語られています。
ことに「ザルツブルブルクの小枝」は有名でしょう。ザルツブルブルクの廃坑に、誰かが小枝を投げ入れておいて。やがら小枝に霜が結晶となって、輝いていた。「あれこそ恋愛の過程だ」。スタンダールはそのように結論しています。
もっとも、その時のスタンダールは、失恋したばかりでしたから、いつもにまして観察が鋭かったのかも知れませんが。
恋愛があれば、失恋もあり、また別れもあるのしょう。別れたあと、どうすれば良いのか。

「どうしても、彼女に訊ねたい事項があった。そのとき書いている小説のために、必要なのである。」

吉行淳之介の『香水瓶』に、そのような文章が出てきます。ここに、「彼女」とあるのが、別れたお相手なのですが。
でも、どうしてここに、『香水瓶』と題されているのか。吉行淳之介は「香水瓶」を持って、「彼女」を訪ねるからなんですね。その香水が、『タブー』。
『タブー』は偶然にも、「彼女」が愛用していた銘柄。

「わたしの使っている香水、覚えていてくださったのね」

でも、吉行淳之介は正直に。「たまたま、選んだのだ」と。

香水は、「パーフューム」p erf um e 。もともとの意味は、「煙を通して」。アルコホルで抽出する以前には、香木から佳い薫りを得ていたからです。
どなたか男に似合いそうな香水を作って頂けませんでしょうか。

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