ダイヤとタッサー

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ダイヤは、ダイヤモンドのことですよね。
ダイヤの装飾品は誰しも憧れの的でしょう。まず第一に、ダイヤは傷つくことがありません。なにしろ硬度計の基準になるくらいですからね。そのかわり高価なこともたしかですが。
ダイヤが登場する小説に、『金色夜叉』があります。『金色夜叉』は、明治三十年に、尾崎紅葉が発表した物語。

「………紳士は彼等の未だ嘗て見ざりし大きさの金剛石を飾れる黄金の指環を嵌めたるなり。」

尾崎紅葉は、「金剛石」と書いて、「ダイヤモンド」のルビを添えています。ご存じの通り、『金色夜叉』には何度も「ダイヤモンド」が出てくるのですが。
もちろんこの「紳士」が、富山唯継。富豪であります。
明治期に『金色夜叉』は大当たり。『金色夜叉』には「前編」、「中編」「後編」とあって。さらに、「続編」、「続続編」、「新続編」があったことからも、そのことが窺えるに違いありません。
あまりに売れるので、出版社のほうではやめてもらっては困るくらいだったのであります。
明治の『金色夜叉』の応援団だったのが、演劇。『金色夜叉』はすぐに舞台に乗せられて、紅涙を絞ったのであります。紅涙とは美人の涙のこと。舞台に『金色夜叉』がかかると、客があふれる。やめるにやめられなかったのでありましょう。
その時代には、たとえば「喜多村緑郎」などという名優がいて、『金色夜叉』を演じる。

🎶 熱海の海岸 散歩する

そんな歌が流行ったのも、当然であったでしょう。『金色夜叉』を読んで、芝居を観る。芝居を観て、『金色夜叉』の本を求める。そんなこともあったのでしょう。

ダイヤモンドが出てくるミステリに、『あるスパイの墓碑銘』があります。イギリスの作家、エリック・アンブラーが1938年に発表した物語。「スパイ物」としては単に名作であるだけでなく、「古典」と評価されている小説でもあります。

「………銀のシガレット・ケース、ダイヤモンドのピンが入っている小箱、金の時計鎖……………。」

これは失ったものを調べている場面でのこと。日本語訳は、堀田善衛。
また、エリック・アンブラーの『あるスパイの墓碑銘』には、こんな描写も出てきます。

「テーブルの傍で、曲がった腕つきの小さな椅子にちぢこまるように坐っているのは、タッサーの絹服を着た……………。」

これは対応に出た警察官の様子。
「タッサー」t uss ah は、絹の節織地。ちょっとポプリンにも似た生地のこと。平織の絹ですが、横に節糸が走るのが、特徴。もとは「野蚕糸」で織った生地だったのです。

「………オットマンての。ポプリンの変わり地なんですけど、フランスもののせいか、ポプリンの持っている堅さがちっともなくて、そりゃあ着ごこちがいいわ。」

昭和三年に、山本有三が発表した『波』に、そのような一節が出てきます。
どなたか1910年代のタッサーで、スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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